(ブルームバーグ):予想以上に弱い7月の米雇用統計を受け、景気の先行き懸念が強まっている。年内の積極的な米利下げ観測が広がり、ドルは5月以来の大幅下落となった。

米利下げ見通しや国債利回りの急低下でドルの魅力が薄れ、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は2日に0.7%下落。ドルが主要通貨に対して最も下げたのは対円だ。日本銀行が追加利上げに踏み切り、円は週間ベースで2022年以来の上昇率となった。

ドルの下落は、投資家の関心が金融政策の相対的な道筋に向けられていることを浮き彫りにした。景気懸念が強まる中、ドルの避難先としての潜在的な需要を上回った。雇用統計を受けて株式相場も下落し、原油も軟調だった。

クレディ・アグリコルのG10FX調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「米金利市場が積極的な利下げを前倒しで織り込み続ける中、ドルは実に居心地の悪い場所にいる」と指摘。「これはドルの優位性を損ねており、他のG10通貨に対してドルを押し下げている」と話す。

ドルは年初来の大半にわたり、堅調に推移していた。米金融当局が20年余りぶりの高水準に政策金利を据え置く一方、景気は底堅かったためだ。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は2日の下落で今年に入ってからの上げを3%に縮小し、200日移動平均をやや上回る水準にとどまっている。

2024年に対ドルで上昇しているG10通貨はポンドのみで、コモディティー通貨と円は後れを取っている。円は今年、対ドルでなお4%近く下げている。資源輸出国であるオーストラリアやカナダ、ニュージーランド、ノルウェーの通貨は4%から7%下落し、さらに悪い結果となっている。

強気のライフライン

ドルの強気派にとっては、センチメントの悪化で世界の支配的な準備通貨であるドルの安全性に対する需要が高まれば、市場のボラティリティーと景気懸念でドル相場の流れが変わる可能性がある。

シュローダーの米州マルチアセット責任者、アダム・ファーストラップ氏は「米主導の世界的なリセッション(景気後退)に突入する場合、通常ならまずドル安が進み、その後ドル高になる」と語る。

現時点では、米国のリセッションは同氏の基本シナリオではないが、2日のデータを受けて、その可能性は高まっているという。

投資家やエコノミストが見込むよりも米利下げが積極的でなければ、ドル高を支援する可能性もある。連邦公開市場委員会(FOMC)会合は今年あと3回残すのみだが、先物トレーダーは2日、年内の計1ポイント利下げを織り込んだ。

XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「債券市場に端を発する全てが為替相場を動かしている」とし、「これから1月にかけて、市場は米金融当局に失望することになるだろうか。それがドルを動かすことになるだろう」と述べた。

原題:Dollar’s Worst Day in Months Shows Fed Outweighs Haven Bid (1)(抜粋)

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