いわゆるオンラインショップとも呼ばれる「ECサイト」。ECとは「エレクトロニックコマース」の略で、インターネット上でモノやサービスを売買することを意味する。経済産業省の調査では、国内の市場規模は2013年で約11兆円だったが、わずか9年で2倍の22兆円まで増えている。より年々拡大を続けるECサイトの実状や課題を探った。

<老舗も実感 ネットの気軽さ>
福島県郡山市の菓子店「柏屋」は、嘉永5年(1852年)創業の老舗だがECサイトにも力を入れている。
本名創社長は「いまでは柏屋の商品いろいろと販売しているが、最初は「薄皮屋」という名前で始まり、取り扱っているのは薄皮饅頭だけだった」と話す。
サイトを立ち上げたのは18年前。商品数を増やし、福島県外からの「お取り寄せ」需要も取り込めるようになった。
本名社長は「以前は電話とかFAXでのご注文だったが、ネットだともっと手軽に注文できるし、ふと思いついたときに頼めるので、それはやってよかった」という。
会員登録が約4万人に成長した柏屋のサイト。専属の人材を配置し、SNSやダイレクトメールなども活用して、利用客数の増加を図っている。
「通販でしか買えないものがあると、また興味を持っていただけるのかなと思う。何かそういうものもできたら、おもしろいかな」と本名社長は話した。

<開設しただけでは売れない>
拡大が続くEC市場。福島県産品を扱うサイト「ふくしま市場」を運営する企業・スペースワンの根本めぐみさんは「自社でサイト運営を行うと、写真を撮ったり商品を準備したり、人的なコストも経費的なところも負担が多い」とその難しさも指摘する。
運営するサイト「ふくしま市場」は、福島県内の事業者の支援につなげようと始めたもので、250社の商品をまとめて扱う。
年間訪問者数は約45万人。小さな事業者のサイトでは実現できない規模感が強みだ。
根本さんは「お店自体はオンラインで開設しやすいが、よりたくさんある中からお客さんに選んでいただいて訪問していただくことが課題。サイトを作っただけで売れるという時代ではない」という。
「ふくしま市場」では、サイトの魅力をPRするアンバサダーを採用。また、規格外の農産物を扱うなど差別化も図り、EC市場の荒波に対抗している。
「お客様に訪れていただけるサイト作りや、魅力を感じて購入に繋がるような商品提案をしっかりとしていけば、今後も展開が期待できるのではないか」と根本さんは話した。

利用者からすると、サイトの使いやすさや魅力的な商品などは確かに大切だが、売り上げのアップに向けて事業者の苦労は尽きないようだ。

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