東海道新幹線の保守車両の事故による運転見合わせから一夜。

取材を進めると、日本の大動脈「新幹線」に依存する危うさが見えてきました。


■日本の大動脈「新幹線」運休の影響 北陸新幹線が代替機能を

23日、始発から運転を再開した東海道新幹線。

JR新大阪駅では、22日の運休の影響で、新幹線での移動を23日に変更した人の姿が多くみられました。

【東京から遊びに来た人】「これから東京に帰ります」

(Q.きょうのチケットは普通に取れましたか?)
【横浜から出張で来た人】「けっこう大変ですね。グリーン席じゃないと空いていない」


22日午前3時半すぎ、愛知県蒲郡市の東海道新幹線の上り線で、保守用の車両が別の保守用車両に追突して脱線。衝突した車両の運転士が首の骨を折る重傷を負うなど、作業員2人がケガをしました。

JR東海は22日記者会見を開き、追突した当時の状況について。

【JR東海 新幹線鉄道事業本部 川越洋施設部長】「ブレーキ操作は行われておりましたが、何らかの原因により減速ができなかったと思われます」と説明した上で、「詳細は現在調査中だ」と述べました。


そんな今回の混乱で、初めて東海道新幹線の代替機能を果たしたものがありました。

それが…。
【品川へ行く予定の人】「あ、そういえば、北陸新幹線で行けるんちゃうかと」

新大阪からサンダーバードなどで福井県の敦賀駅へ。そこから北陸新幹線に乗り換えて、東京へと向かうルートです。

北陸新幹線は22日午前中から満席が目立ち始め、JR敦賀駅では午後から切符売り場の混雑が続きました。

【利用客】「迂回してでもこういう手段があるのはありがたいと思います」


■「すぐ直るかな」とJRの呼びかけを深刻に受け止めない人も

およそ25万人に影響が出た今回のトラブル。

取材を進めると見えてきたのは、大動脈切断“新幹線依存”の危うさです。

運転再開の可能性が低い状況で、JRは混雑のトラブルを回避するため、“異例ともいえる”呼び掛けをしていました。

【JR東海のX】「全線での運転再開をお知らせするまで来駅をお控えいただくか、明日以降へのご旅行計画変更をご検討ください」

しかし、駅には夕方でも運転再開を待つ多くの人が…なぜ、駅に来たのでしょうか。

【東京から来た大学院生】「まさかこんなにも長くなるとは思っていなかった。東海道新幹線は利用する人も多いので、すぐ直るかなと思っていた節もあった」

“きょう中には、再開するかもしれない”と期待する人も多く、JRの呼びかけを深刻に受け止める人もあまりいない様子です。

【東京から観光に来た会社員の女性(25)】「きのう泊まったホテルに電話かけて…」

駅のロータリーで母親に宿の相談をするのは、東京から来た女性(25)です。アイドルグループ「なにわ男子」の大ファンで、夏休みを取り、友人と大阪で“聖地巡礼”を満喫していました。

【東京から来た人(25)】「本人たちが食べていた串カツ屋さんで、同じメニューを食べてきました。やばいです。くたくたです。旅行で楽しかったですけど、疲れもたまっている時に見合わせだったので」

夕方にあわてて駅周辺のホテルを探しますが、すでに手ごろな値段で空いているところは少なくなっていました。

数十分間探し続け、何とか1泊およそ4000円のホテルを確保できました。

【東京から来た人(25)】「やっとゆっくりできるなって感じですかね、涼しい場所で。予想外だったので、新幹線が止まる可能性があると心得て、旅行に行ったほうがいいかなと」

午後5時を過ぎても気温30度を超え、蒸し暑い中、まだ運転再開を待つ人の姿が。

熱中症を心配する声も…。
【東京から来た人(50代)】「もう暑くて動くの嫌ってなって。ギリ間に合うかなって思って、そしたら帰っちゃいたいなと。いっそのこと(運転再開は)無理ですって言ってくれたほうが、楽なんですけどね」

■夜になり運転再開は絶望的に…

【駅のアナウンス】「現時点では本日運転するのぞみ号、終日運転見合わせの予定です」

夜になり、運転再開は絶望的になりましたが…。

【記者リポート】「午後7時過ぎです。駅構内にはまだ多くの人がいて、電光掲示板を確認するなど、運航再開を待っている様子です」

駅員は多くの乗客たちに対応し、手が回らない様子。

この時間になると、東京方面へ行く手段はほとんど尽きていました。

(Q.夜行バスは全然ない?)
【東京から来た人】「ないですね。飛行機も調べたんですけど、全部満席だったので。(Q.あす仕事は?)休みます」

「翌朝まで駅にいるかもしれない」と話す外国人も…。

【イギリスから来た人】「友達が高速バスや夜行バスがあるかを探しに走りまわってくれているけど、あまりないみたいで、孤立状態です」

私たちの生活に欠かせない大動脈でもある新幹線。
“まさかの時”の対応が後手になると、影響はより深刻になるリスクが潜んでいます。

■新幹線に依存しすぎ 代替案の準備を

東西の大動脈が寸断され、取材からみえた“落とし穴”ですが、新幹線の輸送力に私たちが依存しすぎなのではないかということです。

取材の中で「どうしたらいいのか…帰れない」、「予想外、まさか丸一日運休が続くなんて」という困惑の声が、多々聞かれました。

実は東海道新幹線では、事故だけではなく、台風・大雨でも運休する場合はあります。

去年8月、台風の影響で最大9時間半の遅れとなり、新幹線の列車部分を開放してホテルとして一夜を明かしたということもありました。

おととし9月、台風による大雨で午後5時半から翌午前11時まで運休が続きました。


今回もおよそ25万人に影響が出たということですから、東海道新幹線が本当に移動の際の頼みの綱だということがよくわかります。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「われわれは東海道新幹線に頼りすぎ、依存しすぎというのも一つ思われます。ポイントはその輸送力です。東京と大阪間の輸送力の違いなのですが、飛行機は一日でおよそ2万席、それに比べて新幹線は32万席ということで16倍です。そのためいくら飛行機を増便したとしても、とてもじゃないけど新幹線をカバーできるものではありません。東海道新幹線の代わりに何がなるのかというところですが、北陸新幹線が代替できるんじゃないかと。大阪から在来線で敦賀まで行って、そこから新幹線で行くと、東京方面までいけると。東海道新幹線がダメになったとしても、代わりのルートとして存在します。在来線区間について、今はルートをどうするかという問題も出てきてますが、北陸新幹線が早く新大阪でつながれば、完全な東海道新幹線の代替ルートとして機能するように期待されています」


今回のようなことが起こった際、経済にも大きなダメージが出そうです。

【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「逆に言うと長期間、新幹線が止まるって事が今まであまりにも少なかった。ヨーロッパとかストライキがあってしばらく動かないとかあるので、ある程度、代替手段が普段から試してみる機会があったと思うのですが、日本の場合それがなかったのですが、今回、北回りルートを使ってみたということで、もちろん時間はかかるんですけれども、いざとなれば、どうしても移動したい人はいけると。長期的には東京と大阪をつなぐルートだけではなくて、例えば大阪であれば、もうちょっと西日本の経済圏を豊かにして行くとか、リモートで移動がなくても仕事ができる、観光客の方はちょっと余裕を持ったプランを練るという形で、少し移動の仕方を考え直すきっかけにしてみるのもいいかもしれないですね」

東京一極集中から離れていくというところも考え方ですし、あとは代替案としてリニア中央新幹線も含めて議論していく必要性を改めて感じます。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月23日)

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