あす(7月21日)始まる阪急の有料座席『PRiVACE』。すでに有料座席を運用している京阪・JRなどに続き、満を持して導入が決まりました。そもそも『PRiVACE』とは?導入の理由は?鉄道ジャーナリスト・梅原淳さんへの取材などをもとに情報をまとめました。

料金は「運賃+500円」 阪急の有料座席『PRiVACE』とは?

 阪急京都線に導入される有料座席指定サービス『PRiVACE』。private とplaceを合わせた 「プライベートな場所」を意味する造語だということです。

 利用料金は「運賃+500円」で、区間に関係なく一律500円(税込み)の追加料金がかかります。阪急電鉄がかなりお金をかけたという今回の有料座席は、特急・準特急・通勤特急の8割で導入予定ということです。

 2週間前からインターネット予約が可能で、最初は鉄道ファンらの争奪戦になるかもしれません。

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 この『PRiVACE』車両は京都線(全8両)の大阪側から数えて“4両目”にあります。以下の理由から、消去法で4両目への設置が決まったということです。

 ・1両目 = 大阪梅田駅の改札に近いため混雑する
 ・8両目 = 京都河原町駅の階段に近いため混雑する
 ・5両目 = 女性専用車両
 ・2、3、6、7両目 = モーターがあるため少し音がする

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 では、1車両が有料車両になった分、それ以外の車が混雑することになるのでしょうか。阪急電鉄によりますと、そもそも乗客数がコロナ前と比べて10%近く減っていて、約2年前のダイヤ改正のときに特急の本数を減らす選択肢もあったが、『PRiVACE』の運行を見越してあまり減らさなかったということです。データ上は混雑しなさそうですが、慣れるまでは有料車両の近くは混み合うかもしれません。

鉄道各社が『有料座席』導入を進めるワケ

 なぜ鉄道各社は有料座席の導入を進めているのでしょうか。前提として、まず乗客の内訳は以下のようになっています。

 【乗客の内訳】
 ・約6割 = 定期券で乗る人
 ・約4割 = 定期券以外で乗る人(切符など)

 多くが「定期券」を利用していますが、この定期券は1か月あたり30%以上値引きされています。そのため、実際の売り上げを比較すると、定期券以外で乗る人の売り上げの方が多くなるのです。

 【売り上げ】
 定期券で乗る人 < 定期券以外で乗る人
 
 つまり、定期券以外の収入を増やしたいというのが、有料座席設置の狙いとみられます。

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 鉄道各社の有料座席の導入状況、運賃とは別にかかる料金は次の通りです。

 ・泉北高速「泉北ライナー」(2015年):税込み520円(一乗車)
 ・京阪「プレミアムカー」(2017年):税込み500円(出町柳~淀屋橋)
 ・JR「新快速Aシート」(2019年):税込み600円(一乗車 ※チケットレスの場合)

 “高級感”を売りにした阪急は最後発です。また、京阪に関しては、今1両ある有料座席を2両に増やす方針です。

JRvs京阪vs阪急「大阪ー京都」めぐる激戦の歴史

 実は、有料座席導入の背景には、大阪ー京都をめぐる、JR(国鉄)・京阪・阪急の激しい競争の歴史があります。

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【国鉄「大阪ー京都」開通】
 明治時代の1877年、JRの前身・国鉄が、比較的人の少ない場所に、スピードの出る直線的な線路を通しました。

【京阪「天満橋ー五条」開通】
 1910年、京阪は渋沢栄一の尽力もあり、開通。門真や枚方など昔から人が多い街に通しました。沿線人口は多い一方で、カーブが多く速度が出せないという事情も。

【新京阪「天六ー西院」開通】
 激しい速度競争の中、京阪は子会社の新京阪を作り、1930年ごろ天六~西院に新路線を開通。

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【新京阪が「阪急京都線」に】
 スピードを出すために直線的な線路を作ったものの、沿線人口が少なく不採算路線と化してしまいます。その後、新京阪は経営が悪化。阪急がこの路線を引き継ぎ、「阪急京都線」が誕生します。つまり、阪急京都線はもともと“京阪”だったのです。

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【阪急による沿線開発】
 不採算路線を引き継いだ阪急は、「乗客がいないなら作り出せばいい」という創始者・小林一三の言葉どおり、沿線に住宅・学校・遊園地などをつくり、“開発”を進めていきました。

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【価格競争のスタート】
 価格競争も始まります。国鉄はスピードが速い一方で、経営悪化によって運賃が値上げされました。そして、以下のような構図ができあがっていきました。
 
 ・国鉄 = 速いが高い
 ・京阪 = そこそこ遅く、そこそこ高い
 ・阪急 = そこそこ速く、そこそこ安い

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【京阪の差別化戦略】
 そうした中で京阪は、「エアーサスペンション」「2人掛けシート」「テレビカー」など新しい技術を積極的に導入し、乗客を取り込んでいきました。近年増えている有料座席についても、大手私鉄で最初に導入したのは京阪です。こうして、“新しいもの好き”の京阪は“アイデアの京阪”といったイメージとなりました。

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