(ブルームバーグ): バイデン米大統領は現在、2つの前線で政治的戦いを進めている。敵は、大統領選撤退を求める民主党内からの圧力と、共和党候補指名を確実にしているトランプ前大統領だ。

  バイデン氏は11日、注目されていた記者会見を含め、重要な人名を言い間違えるという痛恨のミスを連発。それでも、選挙戦にとどまる意向をあらためて表明した。

  選挙戦継続への決意を強調するバイデン氏は、側近から勝てないと言われれば身を引くだろうが、今は「誰もそんなことは言っていない」と語った。

  ただ、民主党内でバイデン降ろしの風は弱まっていない。 米下院民主党トップのジェフリーズ院内総務は11日夜にバイデン氏と会い、「進むべき道についての結論」などを直接伝えたという。12日に議員らに送られた書簡で明らかになった。ホワイトハウスは両者の会談を確認したが、協議の詳細については言及を控えた。

  北大西洋条約機構(NATO)首脳会談後の約1時間に及んだ記者会見が終わってほどなく、少なくとも3人の民主党下院議員が、バイデン氏に選挙戦撤退を求める議員のリストに新たに加わった。その中には、情報特別委員会の民主党トップであるハイムズ筆頭理事も含まれる。

  バイデン氏は11日夜、党内の「不安を和らげることが重要だ」と認めた。

  12日には激戦州であるミシガン州で選挙イベントを行う。事情に詳しい匿名の関係者によれば、ヒスパニック系議員連盟「コングレッショナル・ヒスパニック・コーカス(CHC)」の陣営と会合を持つ予定にもなっている。

  来週15日にはテキサス州オースティンを訪れ、公民権法制定60周年を記念する演説などで民主党主要支持層との関係強化を目指す。同じ日に開幕する共和党全国大会に対抗する狙いもありそうだ。その後、全米黒人地位向上協会(NAACP)の全国大会を訪問する。

  バイデン氏は11日に記者会見を終える際、自身の失言よりもトランプ氏の暴言や政策の方がはるかに悪いと示唆するようなコメントを残して壇上から去った。

  そのメッセージは12日午前、バイデン氏の盟友の1人であるクライバーン下院議員によって引き継がれた。

  バイデン氏を「全面支持」すると語っているクライバーン氏は、トランプ氏の側近らがまとめている政権移行構想「プロジェクト2025」に言及し、トランプ氏の復権が国民にとってどんな意味を持つか有権者は考えるべきだと主張。プロジェクト2025は連邦政府の大規模改革を提案し、より保守的な政策を実現する青写真を描いている。

  クライバーン氏はNBCの番組で「プロジェクト2025が何らかの形で法制化された場合、何が待ち受けているのかを思い起こしてほしい。そこに焦点を当てるべきだ」と語った。

  プロジェクト2025には前政権の著名なメンバーも関与しているが、トランプ氏自身は同プロジェクトから距離を置く姿勢を繰り返し見せている。そうした態度からは、同プロジェクトに対する民主党の批判が有権者の共感を得るのを懸念している様子もうかがえる。

--取材協力:Alex Wickham、Billy House.

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