(ブルームバーグ): 中国の債券トレーダーは、今年の前代未聞の相場上昇にもかかわらず、喜ぶべきことはほとんどない。

  景気低迷が国債利回りを記録的な低水準に押し下げる中、証券会社、銀行、資産運用会社のトレーダーらは、利回りがさらに低下すれば取引がなくなり、職を失うのではないかと不安を募らせている。

  中国人民銀行(中央銀行)はこの1週間に、短期と長期の利回りをコントロールするために2つの大きな措置を講じた。市場のボラティリティーから利益を得る機会を抑制する動きだ。

  金融危機後の世界では、超低金利やマイナス金利さえ見られた。中国のトレーダーは今、特に日本のトレーダーが数十年にわたる低利回り時代をどのように乗り切ったかを研究している。

  「超金融緩和が限界に達し金利がゼロになるまで、下降トレンドは何年も続くかもしれない」と、アシンプトート・インベストメント・リサーチのチーフエコノミスト、朱振新氏は先週のリポートに記した。

  暗たんたる見通しは、すでに共産党の統制強化、給与の下落、ディールメーキングの不振に見舞われている業界にさらなる暗雲を投げかけている。

  北京の大手証券会社で債券に携わるローレンス氏は、「心臓に短剣を突きつけられている」と表現。利回りがゼロになれば債券市場の取引は大幅に縮小し、個人投資家や資産運用会社の参加はほとんどなくなり深刻な雇用喪失につながると予想している。

  同氏の会社では、17年ぶりにようやく金利が上昇に転じた日本で何が起こったかを研究し、「心の準備」をしていると同氏は話した。発言についてフルネームを明かさないことを求めた。

  中国の66兆ドル(約1京623兆円)規模の金融業界は習近平国家主席の 「共同富裕」キャンペーンを順守しようとしているため、減給や解雇の波が大きくなっている。つまり、今年の債券価格上昇でトレーダーが得た利益は、必ずしも給料やボーナスの増額にはつながらない。

  上海にある大手銀行の富裕層部門では、毎週のミーティングが債券のキャリアがいつまで続くかについて悩むことに費やされることが多いと、トレーダーのジョン・ワン氏が会社名を明かさないことを条件に語った。

原題:Chinese Bond Traders Fear ‘Dagger to the Heart’ as Yields Vanish(抜粋)  

--取材協力:Qizi Sun.

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