(ブルームバーグ): 9日の日本市場では株式相場が大幅高。米国で利下げ期待からエヌビディアなど半導体関連株が軒並み上昇したことが追い風となり、ハイテク比率の高い日経平均株価は900円以上上げ、取引時間中の最高値を更新した。
債券相場は5年利付国債入札の順調な結果を受けて上昇。円相場は株高を受けたリスク選好の売りにより、一時1ドル=161円台に下落する場面が見られる。
インフレ指標の鈍化や労働市場の緩和を受けて年内2回の米利下げ観測が強まる中、市場の関心は日本時間夜に行われるパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言に集まっている。
三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役(ニューヨーク在勤)は、パウエル議長が「労働市場の鈍化を気にかける発言をすると利下げ観測を後押しする可能性がある」とした上で、11日発表の米消費者物価指数(CPI)で利下げが確信に変わるかが重要だと述べた。
FRB議長、高金利批判に直面へ-金融政策巡る今週の議会証言
一方、国内では、日本銀行が国債買い入れの減額計画について市場関係者から意見を聞く債券市場参加者会合が9日と10日の午後に開かれる。植田和男総裁が「相応な規模になる」とした減額の幅やペースに関して日銀からの情報発信があるか、市場は注視している。
株式
東京株式相場は日経平均が取引時間中の最高値を連日で更新し、4万1700円台に上昇した。半導体関連株が上昇した米市場の流れを受け、電機や精密機器に買いが入っている。日経平均の年初からの上昇率は25%に達しつつある。TOPIXも2900ポイントを再び上回り、5日に付けた日中最高値を更新した。
TOPIXの上昇に最も寄与しているのがソニーグループで、5%超の値上がり。指数構成銘柄2136のうち、1336銘柄が上昇、702銘柄が下落。半導体関連などの成長株が上昇し、TOPIXグロース指数は1%を超える上昇となっている。
大和証券の柴田光浩シニアストラテジストは、最近の米経済指標の軟調さが9月の米利下げ観測に拍車をかけているとし、米金融当局が今月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で発言のトーンを変える可能性さえあると指摘。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、米利下げ期待からテクノロジー株やグロース株には買いが向かいやすいと話した。
債券
債券相場は上昇。5年債入札が順調な結果となり、買い安心感が広がっている。日銀が開く債券市場参加者会合で買い入れ減額が大幅になるとの見方は相場の重しだ。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「5年債利回りの0.6%超や10年債の1.1%付近である程度の需要が見え、今後の安心感につながりそうだ」と指摘。ただ、債券市場参加者会合に対する警戒など投資家の身構え方は変わらず、「どんどん上値を追う動きにはなりにくい」とも述べた。
入札結果によると、最低落札価格は99円93銭と市場予想99円89銭を上回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は1銭と前回の2銭から縮小した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は4.26倍と、昨年9月以来の高水準となった。
債券市場参加者会合は銀行などのグループが9日午後3時45分から、証券などのグループが午後5時半から、バイサイドグループは10日午後4時半から日銀本店で開かれる。SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは「減額の幅やペースについて市場から強めの意見が出やすい」とし、「最終的に決めるのは日銀で、会合の中で日銀側から何かしらのヒントが得られないか」を市場は注視していると言う。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=161円前後で推移。日本株の大幅高や時間外取引での米株先物の上昇を受け、投資家心理の改善を受けた円売りが一時強まった。日本時間夜に行われるパウエルFRB議長の議会証言を控え、総じて方向感を欠く動きとなっている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、雇用統計など足元の弱い経済指標が米金利低下とドル安要因となる一方、「金利低下は株式相場に好感されやすく、円の重しとなりやすい」と述べた。
日銀の債券市場参加者会合については、国債買い入れ減額に関する参加者の意見が月額5兆円に集約されれば円売りで、2兆円なら円買いになると語った。
--取材協力:長谷川敏郎.
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