(ブルームバーグ): 米株式市場の強気相場を年内に妨げ得る外的要因を列挙した長いリストに政治的混乱を加えたい。

  5日終了週も投資家の回復力が発揮され、S&P500種株価指数は上昇。これで過去11週間で9回の上げとなった。米大統領選を争うトランプ前大統領との討論会でバイデン米大統領が苦戦したことで当初は動揺していた米国債市場も、経済指標が利下げを後押ししたことで落ち着きを取り戻した。

  今のところ、どんなに波乱含みの展開であっても、リセッション(景気回復)回避に十分なほど経済は拡大。一方で米連邦準備制度の金融緩和を正当化できるという確信に後押しされ、リスク資産の値上がりが力強く続いている。

  ソコロ・アセット・マネジメントのマーク・フリーマン最高投資責任者(CIO)は、「米連邦準備制度が依然として支配的な要因であり、利下げはいずれ実施されるとの見方が強い」と指摘。政治に関する「問題は財政政策に大きな変化があるかどうかだ。現時点では、善しあしは別として、大きな変化はないだろう」と述べる。

  株式相場の絶え間ない上昇は強気派に歓迎され、中にはトランプ氏の勝算が高まったことを起爆剤と見る向きもあったが、大統領選に向け異例な状況も生まれている。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、S&P500種の株価収益率(PER)は26倍と、少なくとも1990年にさかのぼるどの選挙日よりも高いバリュエーションで推移しており、11月の大統領選でどちらが勝利しようとも、株価上昇がそのパフォーマンスへの期待を低下させる理由になるかもしれない。

  リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズのダン・スズキ副CIOは「今日の米超大型株の高いバリュエーションは、今後10年間の大幅なアンダーパフォーマンスを示唆している。圧倒的なシェアを占めているため、米市場全体のリターンもかなり緩やかなものになりそうだ」とみている。

  ただ、4年前の大統領選をバイデン氏が制した際も比較的高いPERだった。バイデン氏が2020年11月にトランプ氏を破って以来、S&P500種は65%上昇している。

  ギデオン・ストラテジック・パートナーズのシニアポートフォリオマネジャー、ジョルジオ・カプト氏は市場の動きを政治潮流の変化になぞらえたいのはやまやまだが、大統領選までまだ4カ月あり、両候補が市場に好ましい要因と非友好的な要因を併せ持つ選挙戦のさなか、そうするのはいかがなものかとの認識を抱いている。

  はっきりしているのは、投資家がデータから望んでいること、つまり物価圧力が徐々に緩和される経済の軟化が続いていることだ。同氏は金融政策が再び焦点になるとし、「市場参加者は勇気づけられる」と話している。

原題:High-Priced S&P 500 Powers Ahead Untroubled by Political Stress(抜粋)

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