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 今や世界中から愛されるラーメン。そんな「ラーメンの聖地」ラーメン博物館で25年ぶりに開催された「ラーメン登龍門」には、海外からも応募が殺到しました。職人たちの熱き激突と舞台裏を独占密着しました。

■厳しい次女の試食「4時間かけた試作品」

新横浜ラーメン博物館
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“新しいラーメン発掘の場”新横浜ラーメン博物館主催の「ラーメン登龍門」は、まさに新時代のラーメンNo.1決定戦とあって注目の大会です。

4月に始まった書類審査には海外からも含め応募が殺到しました。審査員の一人で名店「一風堂」の創業者・河原成美さんは、次のように話します。

河原さん
「(応募者は)ラーメン・スープ・麺のことをよく勉強していると思う」

優勝者には「1年間ラーメン博物館に出店できる」という、ラーメン職人にとって大きな勲章とチャンスが与えられます。今回のテーマは「国産小麦の風味とうまみを生かした味噌ラーメン」です。

河原さん
「味噌ラーメンは難しい。スープで勝負、麺で勝負。バランスが良くないといけないから、結構ハードルが高い」

その後、オンライン面接が行われ、6月の決勝進出を決めたのは8組でした。福岡で味噌ラーメン専門店を開くプロや、タイで大人気ラーメン店のタイ人シェフ、中には唯一のアマチュアである会社員の男性も含まれています。

自作ラーメン

取材班がまず気になったのが、唯一のアマチュア・神田武郎さん(50)。物流会社に勤める会社員です。なぜラーメン登龍門に挑戦したのでしょうか。

神田さん
「家でラーメンを作る人がいるってことと、これだけおいしいラーメンが(家で)作れることを世に広めることができる」

実は神田さんは20年以上、趣味として家庭で「自作ラーメン」を作り続けています。

決勝1週間前、どんなラーメンにするのか、まさに最終調整が行われていました。一番のこだわりは、愛知県の単身赴任中に出会ったというコクが強い豆味噌です。

神田さん
「渋みが少なくて、うまみの塊みたいな味噌」

この味噌を使って作るのは、なんと名古屋名物「味噌煮込みうどん」の良さを融合させたラーメンだと言います。麺は国産小麦を使い、手作りです。

神田さん
「太麺でモチモチした小麦の香る感じの麺にしようかと」

次女の試食

神田さんは妻と娘2人の4人暮らしです。キッチンを使う際には、“鉄のおきて”があります。

神田さん
「キッチンは妻の聖域なので、そこを汚した状態で終わらせたりすると、いくらおいしいラーメンを作っても『もう二度と作らなくていい』という話に」

4時間かけて作った試作品を試食するのは、「父親に似てラーメンにうるさい」という次女の琴羽さん(12)。

琴羽さん
「麺がちょっとやわらかすぎるかもしれん。おいしいけど」

さらにスープなどにも、厳しいアドバイス。

琴羽さん
「他の人のやつ食べたことないから分からないけど、頑張って1位とってほしいなって感じっすね」

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■タイからの挑戦者 ラーメン博物館へ

■タイからの挑戦者 ラーメン博物館へ

味噌スープとアサリ出汁

一方、決勝3日前、新横浜ラーメン博物館にやって来たのは、タイからやってきたジョー・チャワポンさん(40)とデューさん(35)のコンビ。今回、決勝戦に進出した8組の中で唯一の外国人です。

実はジョーさんは、かつて2年間日本のラーメン店で働いた経験を生かし、タイでラーメン店を開き、今では大人気です。

デューさん
「日本で開店したい夢を見ています」 ジョーさん
「(Q.ラーメン登龍門での目標は?)優勝です。頑張ります」

今回のテーマが「味噌」ということで、スープは味噌汁をイメージし、アサリだしに。

ジョーさん
「アサリ味噌のイメージ」 デューさん
「味噌汁の中にアサリが入っているから」

そして勝負をかけるのは、味噌スープに合うチャーシューなどのトッピング。一番のこだわりは、日本のもつ鍋店から取り寄せた牛モツです。

デューさん
「2人ともモツが好きなので、そして、モツはうまみがすごく強い」

目指すは、こだわりのトッピングをぜいたくに使ったフルコースのような味噌ラーメン。はたして、どんな勝負ラーメンができるのでしょうか?

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■若手職人「父を超えたい」運命の戦い

■若手職人「父を超えたい」運命の戦い

極醤油らーめん

続いて訪れたのは、人気ラーメン店「らーめん愉悦処 鏡花 八王子想庵」の新進気鋭の町田将一店長(23)です。

「極醤油らーめん」は6種類もの蔵出し醤油をブレンドした「秘伝の醤油ダレ」を使ったスープが味わい深い、店自慢の醤油ラーメンです。

そんな醤油ラーメンの人気店が、今回は味噌ラーメンへの挑戦。コンセプトは「毎日でも食べたくなるような優しい味噌ラーメン」です。

鶏ガラ、豚ガラ、昆布が入った大会用に開発した澄んだスープで勝負します。さらに、味噌は町田さんが厳選した麦味噌と米味噌、西京味噌の3つをブレンドします。

町田さん
「3種類、別々の特徴があって、それぞれに良さがあるので、相乗効果を狙っている」

実はこのブレンド味噌の使い方が今回、勝負をかけるラーメンの最大の特徴。その秘策とは…。

町田さんの父の挑戦

一方、人気店を構えながら、なぜ今回挑戦したのでしょうか。

町田さんの父・恵一さん(61)は25年前、当時会社勤めをしていました。「第1回ラーメン登龍門」に挑戦し、ベスト10まで勝ち残ったことを転機に、「鏡花」を開店してラーメンの道へ。

今回、25年の時を経て、大会に息子が参加することについて、次のように話します。

恵一さん
「うれしかったです。親として、第1回出場者としては優勝してほしい」 町田さん
「やっぱり、おやじを超えたい」 山椒味噌変化
山椒味噌変化

そして決勝戦当日。運命の戦いが始まります。トップバッターは「父を超えたい」という若手ラーメン職人の町田さんです。

町田さんが完成させたラーメン「山椒味噌変化」。透き通ったスープの上には、独自にブレンドした3種のこだわり味噌がなんと、そのまま麺の上に。さらに、パンチのある山椒も乗った特製味噌ラーメンです。

麺の上に乗せた味噌は、少しずつ溶かし、味変しながら、食べ進める新しい形の味噌ラーメンです。ラーメン名店の店主ら審査員の反応は?

ラーメンデータバンク 大崎裕史会長
「おいしかったです。印象としては、『味噌ラーメンなのかな』と。(味噌と)混ぜた時に…」 町田さん
「味噌ラーメンらしさというのは、味噌をといてから…」 「大崎さんの質問で『味噌をとかない状態だと、味噌ラーメンじゃないのか』と。そこがネックになってくるかな」

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■「2種類の豆味噌で勝負」審査員の反応は?

■「2種類の豆味噌で勝負」審査員の反応は?

愛知まめ味噌らぁ麺

実は、唯一のアマチュア・神田さんは「次女からのアドバイスで、味噌煮込み的なスープの味をより際立たせた」といいます。

神田さん
「味噌を2種類にした。『まろやか過ぎる』と思ったので、渋いのも買ってきて。両方とも豆味噌ですけど、それを合わせます」

2種類の豆味噌を使った濃い色のスープに、仕上げは生たまごの黄身。神田さんが作り上げた「愛知まめ味噌らぁ麺」は、豚肉やかまぼこが乗った、まさしく味噌煮込みうどんのような見た目の味噌ラーメンです。果たして…。

河原さん
「例えば、チョコレートとかカカオとか、他の物を入れても良かったけど、最初から(豆味噌だけ)」 神田さん
「豆味噌をより感じてもらうために、それだけに絞り込んで、あとはぎゅっと濃縮した」 Wモツ味噌ラーメン

そして、ジョーさんとデューさんのタイチーム。実は決勝が始まる3時間前まで、国産小麦を使った特製の麺を試行錯誤し、ようやく納得のいくラーメンを完成させました。

「Wモツ味噌ラーメン」こだわりのトッピングは、日本の三元豚を使った3種類のチャーシュー、そして牛モツ。仕上げには食感が楽しい揚げたゴボウなど、自慢の具材がぜいたくに乗った、まさにフルコースのような「Wモツ味噌ラーメン」です。

デューさん
「(モツは)独特な香りがあったとしても、かんで飲み込んでも、匂いが残らないのを選びました」 「らぁ麺屋飯田商店」
創業者 飯田将太さん
「料理としての完成度は相当高い」

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■優勝「博多味噌らーめん」 審査員が大絶賛

■優勝「博多味噌らーめん」 審査員が大絶賛

博多味噌らーめん

そして、全8組のラーメンの審査が終了。優勝者には「聖地・ラーメン博物館で1年間の出店」という栄誉が与えられます。

「父を超えたい」と参加した町田さんが見事、準優勝。ベスト10だった父の恵一さんを超えましたが、町田さんは「悔しいです。リベンジしたいですね、次は一番を狙って」と語りました。

そして優勝は、福岡で味噌ラーメン店「博多文福」を営む島津智明店主(44)。5種類もの味噌をブレンドした味噌ダレを豚骨ベースの白湯スープに合わせた「博多味噌らーめん」です。

しかも、「太麺と細麺を合わせて楽しむ」という斬新なアイデアも審査員は大絶賛でした。

島津さん
「ちょっと正直サプライズというかドキドキしてます。(1年間の出店は)責任重大なので、心を込めておいしいラーメン作ろうと思います」

惜しくも、ジョーさんたちのタイチームは5位、唯一のアマチュア・神田さんは6位でした。

神田さん
「自作ラーメンを日本の文化にしたいということと、ラーメンで多くの人を笑顔にできたらなと」

次回のラーメン登龍門は3年後を予定。すでに次の戦いは始まっています。

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