物流の「2024年問題」が話題となっている中、輸送手段を変える“改革”に乗り出した企業がありました。
■荷を船に積んだら「帰ります」
香川県にある運送会社で長距離ドライバーを務める大西康弘さん。20年以上のベテランですが、これまでの労働環境は厳しいものだったと振り返ります。
【有限会社 好川商運 大西康弘さん】「(目的地に)夜中に着いて、朝まで休憩して、朝から荷下ろし開始みたいな。(そんな)運行は10何年ずっとやってきた。今だから言えるけど休みがいつになるか分からない。トラック業界は走っていくら、走って給料を稼ぐのが主だと思うんですが、ドライバーの体力的にも勤続は厳しい」
時間外労働を減らすため、この会社では3年前から船を使った輸送を始めましたが、この日から、さらに新たな取り組みも。
関東方面へ冷凍食品を運ぶため、港へと向かった大西さん。船に荷物を載せ、およそ15分後…、トレーラーのヘッド部分だけで出てきました。
Q.船には乗らないんですか?
【有限会社 好川商運 大西康弘さん】「自分は乗らないです。荷物を積んでいるトレーラーの後ろだけを船に乗せて、積んできた荷物は東京に向かって船に乗っていきました。今日は帰ります。仕事終わりです」
なんと、船に乗るのは荷物だけ。
これまではドライバーも船に乗り、関東方面に到着した後も目的地まで自分で荷物を運んでいましたが、この日からはドライバーが乗せた荷物は船で輸送し、協力会社の別のドライバーが目的地まで運ぶことになりました。
この取り組みで、拘束時間を50時間以上削減できるといいます。
【有限会社 好川商運 大西康弘さん】「休息時間を取れるというのは、僕も歳を取っていくので、だいぶ楽になりましたね」
■配送先を近県に限定 給料は「思ったよりも変わっていないですね」
長距離輸送について、ある決断をした会社もあります。
【オーティーロジサービス 大塚 満専務取締役】「(輸送先は)近畿2府4県が多いですね。泊まりがけで行く仕事はほとんどしていないので、その日のうちに帰ってこられる」
大阪府大東市にある運送会社では「2024年問題」に備え、自社での長距離輸送を徐々に減らし、メインの配送を近場の近畿2府4県に切り替えました。
【オーティーロジサービス 大塚 満専務取締役】「お客さまから頂ける運賃が上がればそれが一番いいんですけれども、すぐに交渉して上げていただくというのにつながるわけではないので」
「長距離輸送を1回走るより、地場の輸送を3回、4回と積み重ねていった方が、コストがやっぱり抑えられる。安全性も確保されるメリットがあります」
ドライバーの拘束時間を減らせるだけでなく、燃料費の削減や事故のリスクも少なくすることができました。
効果が早速出ていて、およそ40人のドライバーのうち、多くが夕方には輸送を終え、会社に戻っていました。
Q.働く時間が短くなると給料も変わるのでは?
【従業員】「僕もそう思ったんですが、思ったよりも変わっていないですね。早く帰ったらその分、家族の時間が増えるし、リフレッシュもできて今のほうが働きやすいです」
一方、輸送費の高騰や人手不足などにより2023年、運送業で倒産した会社は328社と、2022年よりもおよそ3割増加。
専門家は、欲しいものがすぐ手に入る今の生活が変わるのではないかと指摘します。
【近畿大学 経営学部 高橋愛典教授】「ネットでクリックすれば商品が手に入る。店頭に行けば、いつもと同じように商品が並んでいる、というのが当たり前ではない」
「商品の後ろにどういう人たちがいて、今何が起こっているのかというところに目を向けるのが重要ではないかと思います」
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