2024年9月に創業70周年を迎える、ラーメンチェーンの大手・幸楽苑。2023年度の連結決算は、純利益が9400万円と2期ぶりの黒字決算となった。前期では純損失が28億円と赤字で、業績の回復を急いでいた幸楽苑がめざしたのは原点回帰。そして、ある秘策が功を奏した。

「いらっしゃいませ」
幸楽苑の店内でみなさんが美味しそうにすすっているのはラーメン!だが、よく見るとギョーザやチャーハンと合わせて食べている。女性客は「(色んなモノが)とっても高くなっているので、この安いセットは凄い助かってます」と話す。
多くの人が頼んでいるのがセットメニュー!たとえばラーメンにギョーザとチャーハンをセットにしたものだと、価格が150円お得だ。
幸楽苑ホールディングス広報IR部の佐々木淳部長は「ラーメン単品でご注文いただくよりも、ギョーザやチャーハン、ライスなどセットでご注文いただいた方が、利幅が大きく、その分値引きがしやすいためです」と説明する。

2023年10月から販売を始めたセットメニューは、値ごろ感をウリにしている。この背景にあったのが業績の悪化だった。新型コロナの感染拡大で、2020年度の売り上げは前の年から約3割減少。メニューの複雑さや採算性の低下なども影響し、厳しい経営が続いていた。
幸楽苑ホールディングスの佐々木部長は「コロナ禍という状況でありましたけど、3期連続の営業赤字決算については、非常に重く受け止めていました」という。

2023年、会長兼社長に復帰した創業者の新井田傳さんが掲げたのが「原点回帰」だ。「おいしくて」「安い商品を提供する」発想で、主力商品のラーメンは価格をキープする一方、セットメニューは値引きするなど改革を実行。こうしたことから2023年度の決算では赤字を脱却し、2期ぶりの黒字に。

そして、ある「秘策」も打ち出した。
それが・・・「お待たせしました。シャキシャキ野菜炒めセットです」
2023年9月から夜の時間帯に導入した定食メニュー!きっかけは新井田社長と友人との会話だったという。「ディナーの時間帯にお酒を注文された際に、おつまみになる商品がないという会話があったそうです。その中で、野菜炒めぐらい出来るんじゃないかという話が合って、それがヒントになった」と佐々木部長は話す。

この夜の定食がヒット!夜の客数が2023年と比べて約2割増えた。そして、酒を楽しみながら味わってもらうことで、客単価のアップにも貢献している。
男性客は「ラーメンも美味しいですけど、こういう定食メニューは酒のつまみに丁度いいからね」と歓迎する。この新しい挑戦で、夜の売上げの割合が半分を占めるほどに上がり、業績を後押ししたということだ。

新しい商品開発と夜の時間帯の開拓でさらに利用客を増やした幸楽苑。5月からはディナーメニューの第2弾も始まっている。「麻婆豆腐」「豚角煮」の2品を導入して、さらに魅力のアップを図っている。
幸楽苑ホールディングスでは、原材料費や人件費など店舗運営コストが今後も上昇し、厳しい経営環境が続くとみている。そのため中華メニューや期間限定メニューを継続的に出して、来店客を飽きさせないようにするという。また、郊外の店については、閉店時間を1時間延ばして午後11時まで営業し、運営コストのアップを吸収するとしている。
こうした取り組みに力を入れることで、今期の業績についてはさらなる増益をめざす計画だ。

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