実は琵琶湖のアユが、ことし、歴史的な不漁となっています。琵琶湖で何が起こっているのか現地を取材しました。

■琵琶湖のアユ「極端な不漁」

滋賀県・琵琶湖の名物「アユ」料理を提供するレストランでは、アユ尽くしのコース料理を楽しむことができます。
しかし今年、このアユの仕入れに異変が起きているといいます。

【「びわ湖松水」店主 松井勇雄さん】「ここまでひどく(不漁と)言われるのは、ないように思います」

■水産関係の団体が要望書提出

4日、地元の漁師などで作る水産関係の団体が、滋賀県の三日月知事のもとを訪れました。

去年12月からのアユ漁が「極端な不漁」で、水産事業者に大きな影響が出ていることから、「アユの放流量を大幅に増やしてほしい」などとする要望書を提出したのです。

【滋賀県 漁業協同組合連合会 佐野高典会長】「なんとしても、この不漁はことしにとどめて、来年は引きずらないように、(アユ)資源の回復を図っていただきたい」

【滋賀県 三日月大造知事】「とても重い問題だと受け止めています。6月議会に向けて、必要な予算の補正も含めて、対応を検討させていただきます」


■実際の漁で目の当たりにした不漁「2月は20日以上休みました」

滋賀県によると、アユは琵琶湖で1番漁獲量が多く、全体の漁獲量の4割から5割を占める、重要な魚です。

しかし、ことし1月、琵琶湖で水揚げされたアユは定置網1カ所あたり4.3キロで、これは何と平年の3%以下。

一体どんな状況なのか、漁船に同乗して現状を取材しました。


■伝統的な「えり漁」

4日午前1時半、船は堅田漁港を出発しました。

漁をするのは、漁師になって50年以上、琵琶湖でアユ漁をして35年のベテラン漁師の今井政治さんです。

【漁師・今井政治さん】「これ上げるんですよ、仕掛け。これが『つぼ』と言って」

今井さんが「つぼ」というのは、琵琶湖で伝統的な「えり漁」で魚を閉じ込める場所のこと。

岸に寄ってくる魚の習性を利用して、魚を「つぼ」に閉じ込め、網で引き上げる漁法です。

手際よく引き上げられた網の中を見てみると、たくさん魚がかかっているように見えますが…

【漁師・今井政治さん】「底に行くとアユが混じってくるけど、はじめはワカ(サギ)や」


網にかかるのは大量のワカサギ。たまにアユ。

【漁師・今井政治さん】「これがアユや。ほぼワカばっかり」


約4時間の漁で2カ所のポイントを回りましたが、ワカサギが約300キロとれた一方で、アユは約40キロでした。

【漁師・今井政治さん】「少ない少ない」「その日によっても違いますけど、いい時だったら100キロとかね(とれる)。ちょうど2月ごろ20日以上休みました。(漁に)行ってもあかんから休業してた」


■去年の猛暑が影響か

【漁師・今井政治さん】「毎年厳しい状態だと思うんですよ。温暖化でどうなるか分からない。昔みたいに必ずアユが卵を産んで、帰ってくるという保証はできませんのでね。琵琶湖にアユがいなかったら私ら生活できないので、良い方に向かうように願っております」

滋賀県水産試験場はこの不漁の原因は去年の「産卵数」の少なさにあると指摘します。水産試験場の調査では、去年のアユの産卵数は例年の20%ほどでした。
琵琶湖のアユは秋に川を遡上して産卵しますが、通常、水温が23度を下回らないと産卵しない傾向があることが分かっています。
去年は猛暑の影響で、アユの産卵のピークである9月に水温が23度を下回った日がなく、アユが産卵する前に死んでしまった可能性があるというのです。


■仕入れは通常の4分の1…名物「アユの佃煮」が作れない

琵琶湖畔で100年以上、アユの佃煮を作っている「木原食品」。

8つ全ての窯を使って、アユを炊いていたといいますが、ことし使っているのは、2つだけです。

【木原食品 木原豊子代表】「(アユの仕入れが)全然、足りません。頑張って炊かなあかんけど、なかなかいない」


2日前、前日は入ってこず、4日にようやく届いたアユは…

【木原食品 木原豊子代表】「(きょうは)22キロぐらい(仕入れられた)。普通だと80から100キロある。(Q.佃煮も数つくれない)そう。待ってもらってるんです、問屋さんも。こんな年知りませんわ」

滋賀県の名産品の一つ、琵琶湖のアユ。
地元の人々は一日も早い回復を望んでいます。


■「行政の腕の見せ所ではあるが難しい」

琵琶湖のアユは他のアユとはちょっと違うということです。元京都府知事の山田啓二さんはこのように話します。

【元京都府知事 山田啓二さん】「小さいんですよ。小さいので天ぷらにすると、頭から食べることができます。また京都の中央部のアユとは大きさも違って、味も違うので、これは本当に琵琶湖の売りの1つですから…ただ、難しいですよね、自然のものだから。行政がやるとしたら、稚アユの放流の量を増やすぐらいしかないのですが、なんで減ったかという根本的な理由が分からないと繰り返しなっちゃいますよね」

産卵数が少ないこともありますが、あと何年も先のことを考えていくと、稚アユの放流量を一時的に増やしても、持続可能なのでしょうか。

【元京都府知事 山田啓二さん】「海の場合でも、サンマやイワシがだんだん減ってきて、サワラが京都の北部で増えたとか、変わってきちゃうので、そのあたりとどう折り合いをつけるのかが、やっぱり腕の見せ所ですが、難しいですね」

今年も猛暑が予想されている中で、生態系への影響も考えられそうです。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「琵琶湖はブラックバスやブルーギルなどの外来種の問題があって、それを駆除したり、努力されてきたのですけども、ことさら気候の問題だと、なかなか滋賀県単独でとか、琵琶湖でどうこうという話ではないので、なかなか対策が難しいのかなと思います。なので今まで名産のアユでしたが、こういう天気がずっと続くと、もうわたしたちがアユを口にすることができなくなる日が来るかもしれません。長い目でみたら、アユに代わるものを本当は探していかなければならない、そんな時代がくるのかもしれません」

改めて資源が取れなくなって分かる、その資源の大切さ。地元の方々にとってもアユは大切な資源です。この歴史的不良、今年で終わりにしたいと、多くの人が願っています。
(関西テレビ「newsランナー」2024年6月4日放送)

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