これまで捨てられていたものから、次世代の“あのエネルギー”を生み出す。

豊かな温泉で満たされた、部屋付きの露天風呂。
なんともぜいたくな空間だが、その温かさの源となっているのは山盛りになっている“紙くずのようなもの”だ。

実は、この紙くずのようなものを使って環境に優しい次世代のエネルギーを作り出す、画期的な技術があった。

富山・高岡市にあるベンチャー企業「アルハイテック」。
アルハイテックが開発したのが、廃棄物として回収したアルミを原料にして水素を製造する技術だ。

アルハイテックの水木伸明社長は、「アルミというのは世の中にあふれていまして。(以前)運送会社にいて、そこで事業をやっていくうちに、環境に良いことをやろうよという話になって、そういった中でアルミがついているゴミと出会った」と話す。

18年前、大手の運送会社に勤めていた水木さんは、環境に関する業務に携わる中、取引先から紙パックや薬の包装シートなど“アルミ系廃棄物の処分方法”を相談され、有効活用を考えるようになった。

水木さんは「パルプは紙になる。樹脂・プラスチックは石油資源に変えることができたことはわかりました。アルミだけ要らないと言われたのが残念で」と話し、学校の授業でのアルミの化学反応を思い出したという。

“捨てられて使われなくなったアルミから水素を作り出す”。

水木さんは運送会社を辞めて独立し、会社を設立した。
大学で勉強をし直しながら、海外の研究機関とも協力し、10年以上かけて、アルミと反応させて水素を生成する、安全で繰り返し使える特殊なアルカリ溶液の開発に成功したのだ。

原料となるのは、これまで焼却か埋め立てでしか処理していなかった“紙パック”や薬の“包装シート”だ。

原料を細かく裁断し、装置を使って、パルプとそれ以外に分離する。
次に大型機械を使い、プラスチックの樹脂を分離して純度の高いアルミを取り出す。

さらに、取り出したアルミとアルカリの溶液を反応させることで水素を製造する。
その水素を使い、燃料電池で発電するのだ。

その場で水素を製造し電気として使うため、従来のように水素の運搬や貯蔵にかかるコストは一切不要になる。

さらに、製造から利用まで、二酸化炭素は一切排出しない。

原料となるアルミは空き缶なども使えるほか、工場などから出されるアルミくずも利用が可能だという。

高岡市内の温浴施設「越中五位花尾温泉「山帽子」」には2023年5月、廃アルミから水素を作り、ボイラーでお湯を沸かす施設を設置した。
客室の露天風呂のお湯を沸かすために試験的に使用されている。

水木さんは、「直近で能登地震もありました。地震対策のために、アルミというのは腐らないので、(アルカリ)反応液も腐るわけではないので、水を置いておけば、お風呂を沸かしたり電子レンジをつけたりすることはすぐ容易にできる。自分のところで集めてきてエネルギー化して、資源とエネルギーを手に入れて使っていくという、自立したサーキュラーエコノミーをみんなで取り組まないといけないと思っています」と語った。

用途が無限に広がる、この水素製造システム。
富山のベンチャー発のこの技術は、今後さらに広がっていきそうだ。

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