今月解禁された北海道のスルメイカ漁。5日朝、函館市で今シーズン初めての水揚げが行われましたが、記録的な“不漁”となっていて、値段も高騰しています。

■“イカの街”函館で初水揚げも…

今季初のイカ釣り漁から戻ってきた漁師には、どこか悲壮感が漂っていました。原因は今季の獲れ高を占う初水揚げ。1990年代、黄色いトロ箱にあふれそうなほど敷き詰められていたスルメイカが、いまやスカスカです。

男性
「(Q.今年の漁獲量は)全くダメですね。イカいないわ。サイズは小型だし、いそうもない」

漁業関係者
「(Q.何キロ?)1キロ」「恥ずかしくて」「なんで持ってきたの」

初水揚げされたイカ、8隻で200キロというのは去年のわずか5分の1ほど。

鮮魚の小売店
「去年は最悪だったけれど今年はどうか。スタートがこの通りあまりよくないから」

漁業関係者の反応は、驚きというより“やっぱり”という感じです。実は、今年の不漁はさらに深刻になるかもしれないと心配されていました。先月行われた漁獲調査では、4日間でスルメイカがわずか2匹しかとれなかったといいます。ここ何年も記録的不漁が続いてきたなか“歴史的不漁”が追い打ちをかけるかもしれません。

鎌倉時代からイカ漁が行われてきたという函館は“イカの街”として名を残してきました。その長い歴史において、今が最もピンチかもしれません。一時は年間7万トンを超えていたスルメイカの漁獲量が、去年はわずか1600トンほど。8年前から1万トンに満たない年が続き、特にここ5年は目も当てられない状況です。

■“イカの北上”妨げる海の異変

原因と考えられているのが、イカの北上を妨げる海の異変です。

函館頭足類科学研究所 桜井泰憲所長
「黒潮が蛇行する。黒潮に乗って北上するスルメイカの子どもが、運ばれていく途中で死んでしまう」

1つは、東シナ海で生まれたスルメイカが黒潮の蛇行で北上できないケース。もう1つは、日本海で生まれたイカが日本海の海水温が高くて死んでしまうというケースです。

■いまや“高級魚”業界に打撃

イカ料理を売りにする料理店にとっては死活問題です。10年以上前は800円で出していたお造り。5日夜は1980円で提供しています。

いか清 室田秀文社長
「昔だと1000円きってたので、きょうもほとんど利益はとっていない値段。『イカ=高級魚』というイメージがついてきた」

函館市民
「(Q.もしイカがなくなってしまったら)どうしよう。俺は何を考えていいか分からない。イカがない生活って函館の人間には考えられない」

加工業にとっても大打撃です。長年、地物のイカにこだわっていた塩辛は、変更を余儀なくされました。

小田島水産食品 小田島隆社長
「(Q.この中で函館漁港でとれたイカは)1〜2割くらい。函館のイカを使って生産できれば一番いいが、函館がとれなくなってるので、そうも言っていられない」

専門家も、蛇行している黒潮が元に戻るかは予測はできないそうで、この先、イカの生育環境が改善するかは分かりません。ただ、こんな希望も残されています。

函館頭足類科学研究所 桜井泰憲所長
「イカは寿命が短くて一気に増えるという特徴を持っている。ちょっとした変化で一気に湧いてくるように増える。そういうことが必ずいつか起こると思う」

▶「報道ステーション」公式ホームページ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。