客が従業員などに理不尽な要求や嫌がらせをするカスタマーハラスメントの実態調査の結果が、5日、公表されました。年々、悪質化する実態が見えてきました。

カスハラを記録したタクシーの車内映像です。
運転手:「謝りましたよ」
乗客:「バカヤロー オラ。謝ってねえだろ、お前。バカヤロー、いい加減にしろ」
運転手:「謝ってなくないです。謝りましたよ」
乗客:「何が謝った。コラ」

乗客は降りましたが、女性ドライバーは泣いてしまい、運転を続けることができません。

別のタクシーでは、夜の繁華街で乗り込んだ男性が。
運転手:「どのあたりに行かれます?お客さま」
乗客:「おい、別にどこでもいいんだよ。お前が思うところに行け」

到着しても続く理不尽な行為。男性ドライバーは外に出て、通報します。
運転手:「いま蹴られました。痛い。また2発、3発、蹴られました。やばい、早く来てください」

この会社では、ドライバーの多くが同じような経験をしたといいます。怖いのは、密室でのその距離感です。
入社8年目のドライバー(60代):「『お支払いはしたくない』という話になり、仕事道具を持ってたみたいで、鉄製のくいを1本、出してきた」
入社3年目のドライバー(50代):「道路交通法上、横断歩道は駐停車禁止なので、その旨を伝えたところ、お客さまが激怒して『なぜ、お客の言うことが聞けない』と助手席をガンと蹴って。予知しなかったもので、非常にびっくりしました」

そこで、タクシー会社は、ドライバーを守るため、3年前に運送約款を改定。カスハラ客の継続乗車を断ることができるようにしました。場合によっては、損害賠償や慰謝料を請求することがあるといいます。
つばめ自動車・天野清美社長:「もちろんお客さまの安全も大事だが、同じように社員の安全も大事と認識して、対策を取り組んでいます。(カスハラは)減少傾向であることは間違いないが、逆に粗雑なご利用者が増えている」

深刻化するカスハラについて、流通・サービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンが、3万人以上を対象に調査を行いました。

UAゼンセン・松浦勝治政策政治局長:「直近2年以内に迷惑行為による被害の回答は(2020年)56.7%から(今回)46.8%と約10ポイント減少しています」

4年前に行われた調査と比べると、被害の総数は少なくなったものの、長時間の拘束、セクハラ行為、SNSやインターネットでの誹謗中傷が増えています。

正当なクレームとの線引きが難しいカスハラ。
やり取りの最中でも、対応できるように具体的な基準を決めた保険会社があります。
三井住友海上のカスタマーセンターでは、カスハラ対策として、AIを導入しました。カスハラにあたりそうな言葉を検知すると、上司に知らせるシステムです。

交通事故にあった契約者とのやり取りを想定した電話対応を体験します。
顧客役:「なんとか修理費、払ってもらえませんか」
渡辺アナウンサー:「お客さまのご契約に基づいてご案内しておりますので、少し対応致しかねるところではございます」
顧客役:「うーん、でも、そんな対応だったら、例えば、ネットに書き込むこととか考えますよ」

AIが、通話をテキスト化するなかで、『ネットに書き込む』という言葉に反応し、赤くなりました。すると、上司のパソコンに『通話中に悪質クレームを自動検知しました』と自動でメールが届きました。

このシステムには「社長出せ」など、約100種類の言葉が登録されています。これらの言葉が使われると、自動的に上司に知らせ、通話を変わるなどの対応が取られるそうです。

入社2年目の社員:「『お前は馬鹿か』『頭が悪いのか』と直接、言われたことはある。いままでは、電話が終わった後に上司の元に報告に行き、録音を聞く。そこで、その後の対応について協議していた。上司がすぐに来てくれる。その後に対応するよりも(即座に)来てくれると、自分は組織で対応しているという安心感はすごくある」

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