福井県内に住む外国人や、県内で働く外国人の数は年々増え、過去最高となっています。企業の人手不足を補う人材として期待され、日本語教育のニーズが高まる中、福井市内の日本語学校には2024年、約150人の留学生が入学。この学校には、定員の3倍もの入学希望者が殺到しました。彼らはなぜ福井の学校を選んだのか?そして、卒業後はどこの地を選んでいるのか?県内の日本語学校の現状と課題を取材しました。
  
2017年に設立された福井市にある日本語学校「福井ランゲージアカデミー」で5月、入学式が行われました。ネパールやミャンマー、バングラデシュなどの国から約150人の新入生が一堂に集まりました。留学ビザで福井にやってきて、2年間、日本語を学びます。
   
日本の専門学校や大学などへ進学するため、日本語を学ぶ学生たち。その半分以上はネパール人です。ネパールは、教育機関や産業が乏しいため、海外にチャンスを求める人が多く、いま日本にやってくる留学生のうち、2番目に多い国籍です。
 
学生:
「日本は子供の頃から有名な国なので留学しました」
「日本語の勉強は難しいがアルバイトがいっぱいある。卒業したらIT企業で仕事がしたい」
 
政府が留学生の受け入れを拡大したことで、いま全国の日本語学校の数は、右肩上がりで増加。その中で、福井にある、この学校が選ばれているのは、なぜなのか。学校を運営する会社の社長は「日本語だけではないカリキュラムが重要」と話します。
 
「福井ランゲージアカデミー」を運営するグローバルリンク・井上俊秀社長:
「教室の中で授業を受けるのも大切ではあるが、どんどん地域に学生が出ていって学校の外で学ぶことも多い。そのあたりも考えたプログラムになっている。教室の外に出て地域のことを学んだり、地域の人と触れ合ったりすることで、自然と日本語を話すので、どんな日本語を学んだらいいのか、モチベーションが高まることにつながっている」

この学校では、日本語能力だけでなく、日本社会で生きていくための力を養ってもらおうと、日本文化やマナー、地域特有のルールなどを学ぶ授業を設けています。この独自のカリキュラムが、学校選びのポイントになっているとのことです。また、安心して学ぶことができる環境も、決め手となっているようです。
 
学生:
「ネパールの田舎で育ったので、福井の空気が合うと思った」

井上社長は「福井は幸福度日本一、ということも発信している。福井の人にとって住みよい街だと思うが、それは海外から来る人にとってもそうで、治安もいいし生活費も都会に比べると安い」と話します。

この学校は“留学生の在籍管理を適正に行っている”と出入国在留管理庁が認めた「適正校」で、中でも、特に優れている「クラス1」に認定されています。学校の運営がしっかりしているため、留学生のビザもほぼ100%取得できるとのこと。
  
授業料は、平均的な日本語学校よりも2割ほど高いとのことですが、この学校の魅力にひかれて、定員の2倍ほどの入学希望者がいるといいます。
 
一方、県内には、留学生を受け入れる進学先があまりないことや、外国人の雇用に積極的な企業が少なく、卒業生のほとんどが関東へ行き、県内に残らないという課題もあります。
 
グローバルリンク・井上俊秀社長:
「地方都市では、やはり外国人の労働者というと人手が足りないからとか、賃金が安く済むという固定観念が根強くある。そういうところに就職するのは、学生の希望や将来のライフプラン、キャリアステップを考えたうえで上手くマッチしない」
 
日本語学校の留学生たちは、日本語を習得したあと、専門学校や大学へ進学し、ゆくゆくは日本の企業で働きたいと思っているが、そのどちらも県内では難しい現状があります。取材した学校によると、日本人と同じ待遇で外国人を採用しようという企業は、県内ではあまり無いといいます。
 
今回取材した学校は、2024年秋に定員を100人増やし、340人の外国人を受け入れられるようになる予定です。今後は、留学生について理解してもらおうと、より企業との交流を増やすことにしています。また、進学先となる専門学校の設立を検討するなど、福井で学んだ留学生が、そのまま福井で活躍できるような環境づくりを目指しています。   

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