クジラの「淀(よど)ちゃん」の死骸を約8000万円で処理した問題で、23日午後、市民グループが訴訟を起こしました。
さらに、大阪市議会の委員会でこの処理の契約をめぐり、議員から激しい追及が行われました。
私たちの税金はどう使われたのでしょうか?
■「淀ちゃん」処理めぐり 市民グループが損害賠償を求め提訴
23日午後、大阪地裁を訪れた市民グループのメンバーたち。去年、大阪湾に迷い込んで死んだマッコウクジラ「淀ちゃん」の処理をめぐる契約は違法だとして、損害賠償を求める裁判を起こしました。
【原告 市民グループ「見張り番」 一柿喜美さん】「調べていったらいろんなことがみんな隠されている。裁判できちんと悪いところは悪いと。お金返しなさいというのなら、返してもらいましょう。そういうところまで持っていきたいなと思います」
「淀ちゃん」の死骸処理をめぐっては、当時、大阪市の松井市長が海底に沈める方針を決定。大阪市は当初その費用を3800万円ほどと試算していましたが、業者側は約8600万円と提示。その結果、業者側の見積もりに近い約8000万円で契約されました。
大阪市の住民4人は、「高額な費用がかかる処理方法にもかかわらず、違法に契約が交わされた」などとして、当時の担当職員3人と業者に対し、処理費用にかかった約8000万円の賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。
■大阪市と処理業者の交渉で不可解なやりとり 増額を進言した課長は業者と会食も
想定を大きく上回る費用での契約については、大阪市と処理業者との交渉で不可解なやりとりが明らかに。
関西テレビが入手した、去年3月下旬の大阪市と処理業者との交渉記録では…
【処理業者の担当者】「ブラックボックスにできるのは『クジラの清掃』なので、うまく8000万(円)台へもっていったらいいんちゃうの」
【担当外の経営改革課長(当時)】「『(金を)積まんことには話にならん』ということやね。8000万円を超える数字を出さないと」
担当の課長が上司に諮らないといけないと発言すると…
【担当外の経営改革課長(当時)】「諮らんでええって。この期に及んでそんなこと言っている時間ないやろ」
このやりとりなどについて、23日午後に始まった大阪市議会の委員会で、市の担当者は議員から厳しい追及を受けました。
【公明党 今田信行大阪市議】「重要な協議に(関係ない部署の)経営改革課長が同席し中心的な役割で金額調整をしていますが、経営改革課長が同席することは知っていたのか」
【大阪港湾局の担当者】「契約の交渉が全く進んでいない状況におきまして、早期に協議を進めたい、とりまとめたいという思いからの発言だったと思いますが、本来の役割を超えており、市民の疑惑を招くことにつながる、適切であったとは言えないと感じています」
さらに、委員会では増額を進言した課長が、業者と会食していたことが明らかになりました。
【大阪港湾局の担当者】「クジラの話とは別に、時間外に事業者を訪問したとのことでした。市民に業者との癒着の疑念を抱かれないようにするために禁止されている会食に該当するものと考えております」
■クジラが死んだ2日後 職員同士で「特定の処理業者と契約進める」メール
疑惑はそれだけでなく、淀ちゃんが死んだ2日後、すでに大阪市の職員同士のメールには、特定の処理業者との契約を進めようとするやりとりが…
【メール】「ストーリーを考えてみたので確認してください。大阪港の引き船業者は、A、B、Cの3社のいずれか。Aは大阪湾でしか運航できない船しか持っておらず、Bは1隻しか引き船を持っていない。Cに確認したところ、請け負えるとのことであったので、Cと契約することにした。こんな感じでどうですか?」
議員が委員会で、随意契約についても横山市長に質問しましたが…
【公明党 今田信行大阪市議】「不適正な契約交渉だったと言わざるを得ないが、これでも市長は適切な契約だったと言われるのか」
【大阪市 横山英幸市長】「やりとりの中で適切とはいない点はあったと考えています。一方で事業費に関しては合理的な根拠をもって精査し意思決定したと、大阪港湾局からも報告受けている」
横山市長はメールについては詳しく触れませんでしたが、大阪市の随意契約について総点検を行う考えを明らかにしました
すぐに淀ちゃんの処理を進めようとする大阪市。しかし交渉の場では、大阪市側から業者側に対し、淀ちゃんや市民のためではない“忖度をした”ともとれる発言が記録されていました。
【大阪港湾局の部長 交渉記録より】「松井市長は今期で辞められ、4月には選挙もあり、マスコミにクジラの費用でたたかれると選挙にも影響する」
【大阪港湾局の担当者】「(記録には)『選挙を控えている中でもあり、リスクはゼロではない』『業者と戦うことになればさまざまな影響があることから、市長・特別職に早急に相談した方がよい』と書かれています」
契約は果たして適切だったのか。大阪市のガバナンスが問われています。
■「淀ちゃん」海に沈めた処理方法が問われることもあるかも
【菊地幸夫弁護士】「ことは税金です。業者を選ぶときに、どこを選ぶか『こんなストーリーでどうですか』ということで、随意つまり入札をやらないで決めるというのは、あってはならないことです。公明正大になぜこの業者を選んだのか説明できなければいけません。またその処理費用の積算も、市長はちゃんと積算したと報告を受けていると言っていましたけれども、やり取りには『こういう理由で、この金額になるんです』ということがちょっと見えないですね。これでは市民の不信を招いても仕方ないです」
職員が罪に問われる可能性はあるのでしょうか?
【菊地幸夫弁護士】「今の段階ではなかなか難しいと思いますけれども、これが不適切な支出ということになれば、市民が訴訟で求めているような賠償命令が出ることにつながっていく可能性があります」
【関西テレビ 神崎報道デスク】「そもそもなぜ淀ちゃんを海に沈めることになったのかというところ。契約とは別の話なんですけども、今年大阪湾に迷い込んで死んだ2頭目のクジラは、陸地に埋設したかなり安い費用で済みました。1頭目の淀ちゃんを、本当に陸地で埋めるところを探したのか、埋めるすべがなかったのかどうか、処理方法についても問われるところがあるんじゃないかと思います」
今年死んだクジラの埋設費用は約1500万円だったと出ています。なぜ処理費用が8000万円にまで膨らんだのか、徹底した調査が求められます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月23日放送)
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