東日本大震災の後、岩手県大槌町では避難生活をする女性たちに「刺し子」を通して希望を見つけてもらおうという取り組みが始まった。
中條奈菜花アナウンサー
「岩手を代表する景勝地の一つ、大槌町の浪板海岸に来ています。この砂浜、東日本大震災で消失してしまったのですが、今はこのように再生されています。さらに大槌町では笑顔を再生させるためのプロジェクトが生まれているのです」
江戸時代中期、当時貴重品とされていた綿製品を大事に使うため生まれた技法「刺し子」。
その伝統技法で大槌に元気と笑顔を取り戻そうという取り組みが「大槌刺し子プロジェクト」だ。
中條奈菜花アナウンサー
「この刺し子、一つ一つすごい丁寧に縫い付けられてますが、大槌刺し子プロジェクトの結成の経緯を聞かせてください」
大槌刺し子 佐々木加奈子さん
「東日本大震災により避難生活を余儀なくされた方たちが、避難所で一日過ごす様子をボランティアの方たちが見ていて、狭い場所でも糸と針と布さえあればできる刺し子を提案してくれたことで始まった」
２０１１年５月に始まったこのプロジェクトは、多い時には約２００人の人が参加していた。
今は４０代から８０代の女性１５人が指折りの刺し子集団として活動している。
大槌刺し子のメンバー
「無心になって縫える。嫌なことも考えないし」
「何にもしてないと一日が長いが、仕事があれば一日を有意義に過ごせる」
「チクチクと縫って、図案の通り縫ってみるときれい。刺し子を買った人がそれを見て、こんなに細かく手がかかっているんだと思って大事に使ってもらえれば、私たちも嬉しい」
発足当初は、ふきんやコースターなどの小物を主に作っていたが、その高い技術力が評価され、大手企業と共同で商品開発を手がけるようになった。
大槌刺し子 黒澤かおりさん
「元々は物を大事にするっていう考えから始まった刺し子だが、ずっと昔から受け継がれてきた技法が製品となって出ていくことを考えると、未来に残るものだと思うので責任感が湧いてきます」
高い技術と斬新なアイデアにより活躍の場はファッション業界へも広がり、刺し子の生地を大胆に取り入れたアイテムも登場した。
手掛けたのは東京を拠点にオリジナルブランドを展開する藤原新さん。
刺し子プロジェクト発足当時から、その魅力に着目し、自身のブランドに取り入れてきた。
ＫＵＯＮ（クオン） 藤原新さん
「私どものＫＵＯＮというブランドですが、世界に出る、世界と戦う、世界一を取ることを目標に立ち上げているブランドですので、世界に出るために刺し子が大きな武器になる。機械でも表現する技法としてあると思うけれども、やはり人がやることによってほかには表現できない温もりがあると思う」
東日本大震災から１３年。
復興が進む被災地だが、人口減少などの課題を抱えている。
そんな中、刺し子を大槌の産業に育て、地域を活性化させようと新たなブランド「サシコギャルズ」が２０２４年３月１１日に誕生した。
ＫＵＯＮ（クオン） 藤原新さん
「刺し子を次に進化させる役割にサシコギャルズはなっていきたい。ここにちゃんと新しい産業を作って刺し子といえば大槌となるような取り組みをしたい」
女性の手仕事をブランドへ。
大槌刺し子に関わる人たちは、復興のその先に目指す姿を見据えている。
大槌刺し子 佐々木加奈子さん
「まだまだ復興されていない所も多い。その中で大槌刺し子が大槌町を元気にしていきたい」
大槌刺し子 黒澤かおりさん
「働く場も増え、大槌町に住む若者や子どもたちに希望や目標になるブランドを目指して、世界に向けて丁寧に仕事をしていきたい」
刺し子を通して地域や世界とつながる。
針で縫い合わせる布のように全てが一つになり、地域発展のモデルケースになることが期待されている。
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