ロシア新内閣の閣僚らとの会合に出席したプーチン大統領(左奥)=モスクワのクレムリンで5月14日、スプートニク通信・AP

 ロシアのプーチン大統領は14日、上下両院の承認を経て、ミシュスチン首相、ベロウソフ国防相らで構成する新内閣を発足させ、通算5期目の政権を本格稼働させた。大統領府が発表した。ウクライナでの「特別軍事作戦」のさらなる長期化を視野に、経済・産業に精通した人材を重用する布陣となった。

 在任20年のラブロフ外相など閣僚の多くは再任された。その中で、国防相の交代は目を引く人事となった。65歳のベロウソフ氏は軍とは無縁の経済専門家で、経済発展相などを歴任。前職の第1副首相時代には経済政策に取り組んだ。中でも、戦闘で多用されている無人航空機(ドローン)の開発・生産の強化に努めた手腕が評価された形だ。

 また、副首相兼産業貿易相だったマントゥロフ氏が第1副首相に昇格した。これまで軍備を含め、ロケット、造船、航空など幅広い産業分野の開発計画を担当していた。今後、前任者のベロウソフ氏と連携し、軍民両面で経済振興を図る狙いとみられる。

ロシアの国防相に新任されたベロウソフ氏=モスクワで2024年5月13日、露上院プレスサービス・AP

 ロシアでは現在、軍事作戦の長期化により、軍事費が国家財政を圧迫する。国防関連費は国内総生産(GDP)の6・7%の規模に達したという。ベロウソフ氏は14日、上院で「課題の一つは軍の経済を一般経済に統合することだ」と述べ、急増した軍事支出の効率化を進める方針を示した。軍事作戦はゲラシモフ参謀総長らが担うとみられる。

 一方、ショイグ前国防相は、重要ポストの安全保障会議書記にスライドし、面目を保った。ショイグ氏は、非常事態相などを経て2012年から国防相を務め、プーチン氏とは休暇を共にするなど良好な関係を築いてきた。

 ただ、ウクライナでの軍事作戦では、露軍は首都キーウ(キエフ)の電撃的な制圧などに失敗し、戦闘が長期化した。前線に投入された民間軍事会社「ワグネル」の創設者プリゴジン氏らからショイグ氏とゲラシモフ氏の指揮ぶりは強く非難され、昨年6月のワグネルの反乱につながった。

 国防省では汚職体質も露呈しつつある。4月以降、ショイグ氏の側近だった国防次官や人事総局長が相次いで収賄容疑で拘束された。露紙RBKは「ショイグ氏の異動と次官の事件には関連性がある」とする関係筋の話を報じている。一連の事態の引責による更迭の可能性も否定できない。

 この異動に伴い、プーチン氏の最側近とされるパトルシェフ前安保会議書記は、プーチン氏のボディーガード出身でトゥーラ州知事だったジュミン氏らと共に大統領補佐官に就任。パトルシェフ氏の長男で農相だったドミトリー氏は副首相に抜てきされている。若手のドミトリー氏やジュミン氏はプーチン氏の後継候補になるとの見方もある。【モスクワ山衛守剛】

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