岸田文雄首相の訪米と日米首脳会談について、笹川平和財団上席フェローの渡部恒雄氏に聞いた。渡部氏は、世界秩序の維持を見据えた視野の広いメッセージが首脳会談で示されたと評価。共同声明で確認された先端技術分野の連携では日本が得るものも大きいと指摘した。
安倍政権以降の防衛努力も反映
以前の日米同盟の議論は日本の防衛をどうするかが中心だったが、今回の日米首脳会談では、世界秩序を維持するためには日米同盟が必要だ―という視野の広いメッセージを明確に示した。かなり前向きで未来志向だ。
かつての日本がこう言っても米国側は白けるだけだったはずだ。だが、近年は米国の力が以前よりも弱まり、日本側のイニシアチブ(主導権)が相対的に高まっている。安倍晋三政権以降の日本が重ねてきた防衛努力も反映され、米国も「日本は口だけではない」と認識を改めたのも大きい。
近年の米国は技術や人材の規制を通じ、世界の「ゲームチェンジャー」となり得る人工知能(AI)などの先端技術を中国側に渡らせないことに注力してきた。ただし、それは米国だけで実現できるものではない。今回の共同声明で確認された先端技術や宇宙開発などでの連携は、日本を信頼できるパートナーとみる期待の表れだ。米国はAIなどの分野で圧倒的に先行しており、日本側が得られるものも多い。
一方、中国から見れば、これらの動きは自分たちの封じ込めが着実に進んでいると映るだろう。日米両国は、中国が南シナ海などで行っている悪質な行為を容認しない姿勢を示しつつ、中国を国際ルールを守る方向に持っていくという難しいかじ取りを迫られている。(聞き手 本間英士)
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