フィリピンが軍事拠点とする南シナ海、アユンギン礁(英語名セカンドトーマス礁)を巡り、フィリピンと中国が対立している問題で、フィリピン当局との電話協議内容とされる記録を中国側が一部のフィリピンメディアに対して一方的に公開し、フィリピン政府が強く反発している。

 フィリピン紙マニラ・タイムズ(電子版)は7日に中国側に提供されたとして、1月に行われた中国外交官と比軍高官間の12分にわたる電話の記録を公開した。フィリピン軍西部方面隊のカルロス司令官と中国側外交官が、アユンギン礁の補給活動について協議したとする内容だ。中国側が補給は水と食料に限り、2日前に中国側に知らせることや、両国とも1隻の船しか用いないとする「新モデル」を提案すると、カルロス氏が上層部も同モデルを「承認した」と伝えたとしている。

 比政府はこれまで、「新モデル」とされる取り決めの存在を否定しており、中国側は、それを覆す「証拠」として記録を流出させたとみられる。フィリピンのテオドロ国防相は中国は偽情報を出す傾向が強いとして「記録」の信ぴょう性に疑念を示したうえで「(無断で通話内容を録音したとすれば)国内の盗聴法に違反する可能性がある」と批判した。テオドロ氏は、南シナ海を巡る国際的な取り決めを結べるのは大統領だけだとも強調した。

 フィリピンメディアによると、中国側と通話したとされるカルロス氏は7日以降、休暇を取っているという。一方、中国外務省の林剣副報道局長は8日の定例記者会見で在マニラ中国大使館が関連するフィリピン側とのやりとりの内容を公開したと認めた上で「経緯は明白で証拠は固く、誰にも否定できない」と主張した。フィリピン側は情報を公開した中国外交官について調査する姿勢を見せている。【バンコク石山絵歩】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。