台湾の衛生福利部長(衛生相)の薛瑞元氏=台湾政府提供

 世界保健機関(WHO)の総会が5月下旬にスイス・ジュネーブで始まるのを前に、台湾衛生福利部長(衛生相)の薛瑞元氏が毎日新聞に寄稿した。

    ◇

 新型コロナウイルスのパンデミックは、既存の国際的な公衆衛生管理の仕組みが、公衆衛生における世界規模の危機に効果的に対処できなかったことを示している。新型コロナはすでに「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」からは脱したが、WHOは、いわゆる「疾病X」のパンデミックの脅威が迫っており、各国政府が共に世界の公衆衛生管理と安全対策を向上させなければならないと警鐘を鳴らしている。

 新型コロナ流行期の中ごろより、WHOは現行の国際保健規則(IHR)について今回の危機対処への限界が明らかになったとして見直しを始めた。同時に新たな「パンデミック条約」についても議論されるようになった。これは新たなグローバル疾病管理の枠組みに説明責任、透明性、公平性を取り入れ、次のパンデミック発生時の世界的な行動規範とするもので、5月下旬にスイスで開かれる第77回WHO年次総会(WHA)で採択される見込みだ。

 台湾はWHO非加盟国でIHR(2005)の条文改定や「パンデミック条約」の起草に直接参加することができないが、強い関心を持っている。我々は自身の感染症との闘いの経験を分かち合い、他国の経験についても学ぶことを強く望んでいるからだ。IHR(2005)条文改定と「パンデミック条約」の採択と実施を強く支持しており、WHOに対して台湾をこの二つの文書の署名に加えるよう呼びかけたい。それを通して次のパンデミックに対処する準備を整え、国際社会のより強靱(きょうじん)な防疫体制を共に構築していきたい。

 また、我々はWHOに対して世界の公衆衛生管理の仕組みに台湾を加えるよう呼びかけたい。台湾が専門性と実務によって貢献する原則でWHOと連携すれば、保健安全保障の地理的空白が埋められ、国際的な保健衛生の枠組みをより一層包括的にできる。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、マスクを着用して街を歩く市民=台北市で2022年2月2日午後3時44分、岡村崇撮影

 過去数十年間にわたり、台湾はWHOの勧告に沿いながら、あらゆる疾病を予防し、健康サポートの環境の構築を進め、同時に人々の生涯を通じての健康環境の向上を図ってきた。台湾は「(全ての人が基礎的な保健医療サービスを必要な時に負担可能な費用で享受できる)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」を達成した経験と専門知識を世界と共有することに力を入れ、「すべての人に健康を」の目標実現をサポートしている。

 台湾はこれまで、政府や民間の力を通じて、パートナー国や国際機関と連携し、国際社会が健康権を実現できるよう協力してきた。台湾はWHOが掲げる「健康は人権」の実現に向けて協力しているが、2300万人の台湾人の健康権は、政治的理由によりWHOから無視されている。

 世界中のすべての人の健康を守る努力をする上で、台湾は常に頼れるパートナーである。我々は、WHOおよび関係各方面に対して、台湾によるグローバルな保健安全保障および健康権に対する貢献を直視してもらいたい。また、WHOがより一層開放的な姿勢と柔軟性を持って、専門的かつ包容的な立場で、台湾をWHOパンデミック条約の話し合いを含む「WHO年次総会」およびWHO関連会合、活動、メカニズムに招くよう望んでいる。

 それにより、台湾が世界各国と共にWHO憲章の「健康は基本的人権である」並びに国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「誰も取り残さない」という目標を実現できると信じている。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。