先住民との会合に出席したルラ大統領=ブラジリアで2024年4月25日、ロイター

 ブラジルのルラ大統領(78)が4月30日、毎日新聞など日本メディアのインタビューに応じた。グローバルサウス(南半球を中心とする新興国・途上国)の代表格として存在感を高める国のトップはどういう人物なのか。【ブラジリア中村聡也】

 本名はルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ氏。中南米を代表する左派の政治家で、2022年の大統領選で右派のボルソナロ大統領(当時)を大接戦の末に降し、12年ぶりに大統領に返り咲いた。

 北東部ペルナンブコ州の出身。貧しい農家の8人兄弟の七男で、家に風呂はなく、数キロ離れた湖で体を流した。サンパウロ州に出稼ぎに行った父を追いかけ、7歳で母親や兄弟とともに故郷を離れた。

 1957年、12歳で最初の仕事を得たのは、サンパウロ州で日系人が経営するクリーニング店だった。その後、金属を切削加工する旋盤工になったが、事故で左手小指を失った。

 64年、同州の工業地帯の一つ、サンベルナルドドカンポの金属工場で働きながら、軍政に反発する組合に入った。72年に地域の旋盤工が組織する労組幹部となり、75年、29歳で10万人を束ねる委員長に昇進した。

 政治に目覚めたのは79年、軍政への不満が高まる中、業界でストを指揮し、首謀者として拘束されたときだった。

 4歳年上の兄は地元メディアに対し「それまで弟は政治に逆らってきた。だが、この経験で労働者の要求に応えるのは政治だと気づいた」と振り返る。80年、組合員らと労働者党を結成した。

 87年に下院議員として政界入り。4度目の挑戦で02年大統領選で初当選し、03年から2期8年務めた。退任時の支持率は87%と過去最高だ。ただ、18年には汚職事件で有罪判決を受け、その腐敗イメージが尾を引いている。

 社会主義国キューバで国家評議会議長を務めたフィデル・カストロ氏と親交があり、16年の死去の際には「中南米で最も偉大な人物で、兄のような存在だった」と別れを惜しんだ。友人の一人は「敵対する人とも関係を築く能力がある」と評する。

 3度結婚し、子どもは5人。サンパウロに拠点を置くサッカーの名門クラブの一つ、コリンチャンスのファン。

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