辞意を表明したスコットランド自治政府のユーサフ首相=エディンバラで2024年4月29日、ロイター

 英スコットランド自治政府のハムザ・ユーサフ首相(39)が29日、辞意を表明した。自身が党首を務めるスコットランド民族党(SNP)と連携してきた緑の党が連立を離脱し、政権運営が困難になっていた。今後、SNP党首も辞任する。政治混乱が続く中、英国からの「分離独立」を目指すSNPへの支持は低迷しており、独立運動も停滞する可能性がある。

 ユーサフ氏は29日の記者会見で、「政治的分断の修復のためには、他の誰かが指揮をとる必要があると判断した」と退陣の理由を説明した。近くSNPの新たな党首選が実施され、ユーサフ氏は後任が決まるまで首相と党首を続ける。

 英メディアによると、スコットランドは2030年までに温室効果ガス排出を1990年比で75%削減する目標を掲げていた。だが英政府の独立諮問機関・気候変動委員会から「達成困難」との指摘を受け、4月に入り目標を撤回した。これに反発した緑の党は連立政権を離脱し、野党もユーサフ氏に対する不信任案を提出。近く議会で可決される見通しとなっていた。

 ユーサフ氏はパキスタン系。23年3月にイスラム教徒として初めて英国内の主要政党のトップに就任したが、約1年で退陣することになった。

 英国は人口約6700万人のうち8割以上を占めるイングランドに加え、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを合わせた計4地域で連合王国を形成する。スコットランドは一定の自治権が認められ、SNPは将来的に英国からの「分離独立」を掲げている。

 だが最近のSNPは混乱が続く。ユーサフ氏の前任のスタージョン前自治政府首相の夫は昨年以降、党が集めた独立運動のための資金を流用した疑惑で当局の捜査対象となっている。こうした中、英調査会社ユーガブの世論調査(3~4月)では、スコットランドでのSNPの支持率は31%で、労働党の33%に及ばず、14年以降で初めてトップの座から滑り落ちた。独立を巡る世論調査でも、近年は「独立反対」が「賛成」を上回る傾向にある。【ロンドン篠田航一】

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