米国で2021年1月に起きた連邦議会襲撃事件を巡って、司法省の監察官は12日、報告書を公表した。連邦捜査局(FBI)の協力者計26人が現場付近にいて、うち4人が議事堂内に入ったと指摘。ただ、FBIから議事堂内への立ち入りや暴力をけしかける不法行為を許可・指示されていたケースはなかった。FBIの覆面捜査官が現場にいたとの証拠もなく、「FBIが事件を扇動した」とする陰謀論を否定する結論を出した。
報告書によると、事件当日、FBIに情報提供する協力者3人が各地の出先機関などの指示で、議事堂付近に集まった当時のトランプ大統領の支持者らを監視していた。事前に情報収集にあたるなどしていた23人の情報提供者も現場にいたが、一部は担当のFBI捜査官に事前に知らせていなかった。
協力者のうち4人は、暴徒化したトランプ氏の支持者らと共に議事堂内に侵入し、13人が議事堂付近の規制エリア内に立ち入っていた。しかし、FBIはこうした行動や暴力の扇動を指示していなかった。
FBI内部では情報提供者の現場入りの状況が共有されておらず、本部やワシントン事務所が、トランプ氏の支持者らと行動を共にしていることを事前に把握していたのは5人だけだった。監察官は「情報共有されていれば、状況把握や迅速な対応が可能だった」と指摘した。
事件は、20年大統領選の敗北を受け入れないトランプ氏が近くで開いた集会で「議事堂へ行進しよう」と呼びかけた後に起きた。議会では当時、選挙の公式集計手続きが行われており、暴徒の襲撃によって手続きは一時中断し、議員らが避難した。トランプ氏の支持者の間では「極左勢力が暴力をあおった」「FBIが議事堂にわざと群衆を入れた」といった陰謀論が根強くある。【ワシントン秋山信一】
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