台湾の中央通信社は10日、安全保障当局者の話として中国がここ数日、台湾周辺の海域で90隻以上の艦船を展開していると報じた。1996年の台湾海峡危機以来、最大規模という。台湾国防部(国防省に相当)も、日本の南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」内を中心に多数の軍艦を確認している。
中国はこうした活動を公表していないが、侵攻や封鎖作戦の際に米国など外国軍の介入を防ぐことをにらんだ、事実上の演習との見方もある。台湾は「国際海運を妨害している」(外交部)と批判するとともに、警戒を強めている。
当局者によると、中国軍で台湾方面を管轄する東部戦区だけでなく、北部戦区や南部戦区の部隊も展開。軍艦による船団攻撃や海警局による輸送船の臨検を想定した内容という。第1列島線は中国が設定した米国に対する防衛ライン。米国が来年1月のトランプ政権発足に向けた移行期であることを踏まえ、中国がこのラインの中での影響力を高め、各国に誇示する狙いがあると分析した。
10日の記者会見で台湾国防部は、中国海軍の展開範囲が第1列島線を越える海域にまで伸び、「中国海軍の壁が築かれている」と述べた。台湾の封鎖だけでなく、さらに遠くの海域に兵力を展開させる能力を高める目的があると説明。「西太平洋で外国の軍隊を阻止できるだけの兵力を組織している」とした。
一方、10日午前6時以降の24時間で、延べ53機の中国軍機が台湾周辺で活動し、うち23機が台湾海峡の中間線を越えたという。
中国は2022年のペロシ米下院議長(当時)訪台に反発、台湾を取り囲むような形で演習区域を設定し、弾道ミサイル発射を伴う大規模演習を実施。今年5月の頼清徳総統の就任直後などにも行ってきた。
頼氏は12月6日までの太平洋諸国歴訪の途中でハワイなど米国に立ち寄り、中国側は強く反発。今回も中国軍による演習があるのではとみられていた。
台湾国防部は9日、中国軍が上海から南部・福建省にかけての沿岸上空に七つの「保留区」を11日までの期限で設定したと明らかにしたが、この区域では実弾訓練などの動きは確認されていないという。
中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は11日の記者会見で、中国軍の展開について問われたが直接答えず、「必要な措置を取り、国家の主権と完全な領土をしっかり守る」と述べた。【台北・林哲平】
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