シリアのアサド政権崩壊に伴い、イスラエルがシリア領内での軍事活動を強化していることに対し、国連などから懸念の声が上がっている。イスラエルは「軍事的な資産がイスラム過激派の手に渡るのを防ぐため」などと主張。ただ軍事活動により混乱に拍車がかかったり、複雑化したりする恐れがある。
「イスラエルは活動を停止する必要がある。シリアの変革の可能性を破壊する行動を取らないことが極めて重要だ」。国連のペデルセン特使(シリア担当)は10日、スイス・ジュネーブでの記者会見でこう指摘した。
また国連のデュジャリック報道官も10日、イスラエルのシリア領内での軍事活動を「シリアの転換期を利用している」と批判。「シリアの領土保全に対するいかなる侵害にも反対する」と述べた。サウジアラビアも批判している。
報道によると、イスラエル軍は10日までに、少なくとも350回以上の空爆を実施。シリア軍の艦隊のほか、防空システム、戦闘機、ドローン(無人航空機)などを破壊した。またシリアとの国境にある占領地ゴラン高原の非武装地帯にも軍を送った。イスラエルのネタニヤフ首相は「シリアの内政に干渉するつもりはないが、必要なことは全てやる」と強調する。
ロイター通信によると、イスラエル側は、シリアの首都ダマスカスに向けて進軍しているとの情報は否定した。
シリアの反体制派を主導してきた「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)は10日に暫定政権の樹立を発表したが、反体制派が結束して安定に向かうかは不透明だ。こうした中、イスラエルの軍事活動は新たな「火種」となりかねない。
一方、イスラエルの後ろ盾となってきた米国のバイデン政権は表立った批判を控えている。カービー大統領補佐官は10日、「イスラエルは差し迫った脅威を取り除くための緊急の作戦だとしており、彼らには自衛のための権利もある。ただ詳細は彼らが説明する」と述べた。【ワシントン松井聡、ニューヨーク八田浩輔、エルサレム松岡大地】
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