連立政権が崩壊したドイツのショルツ首相は11日、連邦議会(下院)に信任決議案を提出する。16日に予定されている信任投票で否決されることが確実で、その後シュタインマイヤー大統領が下院を解散し、2月23日に総選挙が実施される見通しだ。国内では世論調査で支持率が高い野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を中心に、早くも連立交渉をにらんだ動きが始まっている。
信任決議案が出されるのは2005年のシュレーダー首相(当時)以来。ショルツ政権は中道左派の社会民主党、環境政党の緑の党、中道の自由民主党の3党から成る連立政権だったが、今年11月に自民党が連立から離脱した。
公共放送ZDFが12月6日に発表した世論調査によると、支持率が最も高いのは、メルケル前政権で与党だった中道右派の統一会派CDU・CSUで33%。次いで、地方選挙で躍進が続く排外主義的な右派、ドイツのための選択肢(AfD)が17%と続き、ショルツ氏が率いる社民党は15%にとどまる。緑の党は14%、自民党は4%だった。
現時点で次期首相に最も近い立場にいるCDUのメルツ党首は、社会福祉の削減や難民規制の強化など保守的な政策を打ち出し、厳しすぎる気候変動対策にも懐疑的とされる。メルツ氏が政権を率いることになれば、リベラル色の強かったショルツ政権からの方針転換となりそうだ。
ただ、現状では総選挙でCDU・CSUは単独過半数には届かない情勢だ。メルツ氏はAfDとの連立を否定しており、社民党か緑の党との連立が現実的となる。
メルツ氏は今月3日、独大衆紙ビルトに対し「外交と安全保障政策では緑の党と共通点が多い」と述べ、同党との連立交渉の可能性をにおわせた。緑の党は、ショルツ氏が拒否する長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与を含む積極的なウクライナ支援を主張しており、メルツ氏の考えと近い。ただ、両党はその他の政策では相いれず、CDUの姉妹政党であるCSUのゼーダー党首は両党の連立に反対している。
一方、社民党と組めば、メルケル前政権以来となる2大政党による「大連立」となる。だがCDU・CSUは政治の混乱を招いたとして、ショルツ氏を厳しく批判してきた。「ショルツ氏なしの社民党ならチャンスがある」(ゼーダー氏)との声が上がるほどで、連立交渉は容易ではなさそうだ。
21年の前回の総選挙では、支持率トップだったCDUのラシェット党首(当時)が災害現場で笑ったことを批判され、社民党が10ポイント以上開けられていた差を逆転してショルツ政権発足につながった。今後の動きや出来事次第で、選挙情勢は大きく変わる可能性もある。【ベルリン五十嵐朋子】
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