協議後、声明を発表する韓国の韓悳洙首相(左)と与党「国民の力」の韓東勲代表=ソウルで2024年12月8日、AP

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「非常戒厳」を宣布したことを巡り、韓国の韓悳洙(ハンドクス)首相と与党「国民の力」の韓東勲(ハンドンフン)代表は8日、今後の対応について協議した。協議後、両氏は尹氏が外交を含む国政に関与しない方針を発表。事実上、韓首相が当面の間、国政運営を担うとした。

 韓代表は協議後の声明で国民の多数は尹氏が「大統領職から退くべきだ」と考えているとし、「秩序ある大統領の退陣」で「混乱を最小限に抑え、国民と国際的な不安を解消し、民生と国の尊厳を回復させる」と説明した。

 韓首相は、米韓や日米韓、友好国との信頼関係を維持するため、「外相を中心に全内閣が最善を尽くす」と強調。「内閣と省庁の公務員は国民の意思を最優先にし、与党と共に知恵を集めて国家機能を安定的かつ円滑に運営する」と述べた。また、「私たちが全てを超えて団結しなければならない」と強調し、政府が提出する予算案と法案を国会で可決するための協力を野党に求めた。

 7日に国会で行われた尹氏に対する弾劾訴追案の採決では、反対する与党議員たちが投票せず、投票不成立で廃案となった。韓代表と韓首相は国政の「早期安定」が重要だと強調することで、弾劾以外の方法に理解を得たい考えとみられる。

 国会での採決に先立ち、尹氏は自身の任期と、政局を安定させるための政策を与党に一任するとの談話を発表した。与党に所属する呉世勲(オセフン)ソウル市長などは、大統領の任期を2期4年にする改憲をし、尹氏は1期目で辞任するよう求める案を提案。尹氏の任期が終わるまでは、韓首相を「責任首相」にし、権限を首相に委譲するとしている。

 一方、共に民主党の金民錫(キムミンソク)最高委員は8日の記者会見で、首相に外交権や軍統帥権などを行使する権限はないとし、「国政運営の中心になるのは憲法上不可能だ」と指摘。韓代表と韓首相の発表内容は「国を非正常に導こうとする違憲的で無政府的な発想だ」と批判した。

 現在、最高検察庁は内乱罪容疑などで告発されている尹氏や前国防相に対する捜査を開始している。だが、金氏は尹氏や韓代表が元検察であることから、政府から独立した「特別検察官」を任命するための法案を発議する方針を示した。特別検察官は、大統領の親族や政府高官らが関与した不正など、政治的な中立性を求められる事件を担当し、国会が推薦した弁護士から任命する。

 尹氏の弾劾を巡っては、共に民主党は、弾劾訴追案が通るまで法案を提出し続ける方針。11日に臨時国会を開き、再度、弾劾訴追案を提出するとしている。【ソウル日下部元美】

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