内戦が続くシリアの反体制派は7日、首都ダマスカス郊外まで進攻したほか、中部の要衝ホムスでも政府軍を撤退させ、市内を完全に制圧した。ロイター通信などが報じた。ホムスは国内の主要都市を結ぶ交通路の要衝で、反体制派による首都への攻勢が一段と勢いづくのは必至だ。アサド政権の崩壊も現実味を帯びつつあり、2011年に始まった内戦は新たな局面を迎えた。
反体制派の幹部は7日、SNS(ネット交流サービス)で「我々の部隊はダマスカス包囲の最終段階を始めた」と述べた。
報道によると、反体制派は南部ダルアーから政府軍を撤退させた後、ダマスカスに向けて北上した。政府軍は首都郊外からも続々と撤退しており、市内での防衛戦を見据えている模様だ。地元記者によると、ダマスカスでは戦闘を恐れて避難する住民も出始めている。
ダマスカス南部ではイスラム教少数派ドルーズ派を主体とする反政府デモも起き、アサド大統領のポスターや父ハフェズ・アサド前大統領(00年死去)の像を破壊した。ドルーズ派が多い南部スワイダでは7日、地元の反体制派が警察署を急襲し、刑務所から収容者を解放していた。
一方、ホムスでは北部と東部から反体制派が進攻。政府軍の車列は南部へと撤退を始め、幹部もヘリコプターで基地を脱出したと報じられている。反体制派はホムスの中央刑務所も制圧し、収容者を解放したという。
ホムスはアサド政権を支援するロシアの軍事基地がある西部のラタキアやタルトスとダマスカスを結ぶ幹線道路の途中にある。反体制派はホムスを制圧したことで、ダマスカスを孤立させた形だ。ホムスから南下すれば、反体制派が首都を南北から包囲する格好となり、アサド政権の危機はいっそう深まることになる。米CNNテレビは7日、「数日でアサド政権が崩壊する」との米政府当局者の見方を伝えた。
こうした中、アサド政権の後ろ盾となっているロシアのラブロフ外相とイランのアラグチ外相、反体制派を支援するトルコのフィダン外相は7日、カタールの首都ドーハで会談し、シリア情勢について協議した。イランメディアによると、3人はアサド政権と「正統な反体制派」に対して交渉による解決を呼びかけることで一致した。一方、ラブロフ氏は会談後のフォーラムで「テロ組織の支配を許してはならない」と述べ、政府軍を支援する姿勢を改めて強調した。
また、3カ国は7日、サウジアラビアやエジプトなどアラブ5カ国とともに共同声明を発表し、武力衝突をやめて政治的解決を目指すよう呼びかけた。【カイロ金子淳】
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