内戦が再び激化しているシリアで6~7日、各地の反体制派勢力が東部デリゾールや南部ダルアーを制圧した。ロイター通信などが報じた。シリアでは11月下旬以降、反体制諸派の攻勢が強まり、情勢は一気に不安定さを増している。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は6日、戦闘激化で少なくとも37万人が避難したと発表した。民間人にも数百人規模の死傷者が出ている模様だという。
ロイターなどによると、デリゾールでは6日、米国が支援するクルド人主体の反体制派組織「シリア民主軍」(SDF)が市内へ進攻。政府軍やアサド政権を支援する親イラン武装組織はほとんど交戦せずに撤退し、SDFが支配下に置いた。SDFは、デリゾールから南東約120キロにあるイラクとの国境検問所も制圧したという。
イラクには、アサド政権を支えるイランの影響下にある武装組織が存在し、一部はシリア政府軍を支援するため越境している。SDFによる検問所の制圧で、こうした組織の増援に影響が及ぶ可能性もある。
また、シリアの別の反体制派組織は7日、南部ダルアーを制圧したと表明した。政府軍は首都ダマスカスへの安全な撤退を条件に、ダルアーを明け渡したという。この反体制派は6日にはダルアー近郊の政府軍基地やヨルダンとの国境検問所の一部を占領していた。
一方、米国がテロ組織に指定する「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)を主体とする反体制派は勢いづいている。シリア第2の都市・北部アレッポや中部ハマの制圧に続き、6日にはハマの南方約40キロに位置する第3の都市・中部ホムスへと迫った。ホムスでは5日夜から多くの住民が避難を始め、治安部隊の拠点は放棄されたとの報道もある。政府軍はこうした情報を否定している。
ホムスは主要各都市へ通じる交通路の要衝だ。反体制派が制圧すれば、首都を目指す攻勢が始まる可能性もある。その場合、近年はイランやロシアの軍事支援で確保されていたアサド政権の軍事的優位が大きく揺らぐことになる。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、イランは既に、シリアへ派遣していた精鋭軍事組織・革命防衛隊の幹部らを国外へ退避させたという。親イランの民兵組織をダマスカスに集結させているとの情報もあり、首都での攻防激化を見据えている可能性がある。【カイロ金子淳】
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