韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は7日午前、談話を発表し「国民に不安を与え、不便をおかけした。国民に心よりおわび申し上げる」と謝罪した。尹氏は3日夜に「非常戒厳」を宣布し、野党や国民から厳しい批判を浴びてきた。尹氏が公式に発言するのは、4日未明に戒厳令解除を発表して以来、初めて。
野党が提出した尹氏に対する弾劾訴追案は7日午後、国会で採決される。保守系の与党「国民の力」から8人以上が「造反」して賛成に回れば弾劾案は可決され、大統領は職務停止となる。与党議員の一部に賛成の動きがあり可決の公算が大きくなっていたが、尹氏の謝罪を受け、情勢が変化する可能性がある。
尹氏は談話で、戒厳令を出した理由について「国政の最終責任者である大統領としての切迫感から始まった」と説明したが、「切迫感」の内容には言及しなかった。また「今回の宣布について、法的、政治的な責任問題は回避しない」と述べ、「私の任期を含め、今後の政局の安定策は我が党(与党)に一任する」と表明した。
党内の一部では事態の収拾策として、憲法改正によって大統領任期を短縮する案が出ている。尹氏の発言は、こうした動きを念頭に置いたものとみられる。
国民の力の韓東勲(ハンドンフン)代表は7日、記者団に対し「尹大統領は正常な職務遂行が不可能な状況で、早期退陣は避けられない」と述べた。「最善の方法を議論する」とも話した。
最大野党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)代表は7日、尹氏の発言について「非常に失望した」と指摘。「即時の退任、あるいは弾劾による早期退陣しかない」と訴えた。
弾劾案の可決には、国会の在籍議員の3分の2に当たる200人以上の賛成が必要。野党と無所属の議員は計192人で、与党から8人以上の賛成票が必要だ。
与党は5日、弾劾案への反対方針を決定した。だが6日になって韓氏が「大統領の職務停止が必要だ」と述べ、賛成すべきだとの意向を示唆。これを受けて与党の2人が弾劾案への賛成を表明し、少なくとも5~6人が賛成の意向を固めたとの報道も出た。ただ韓氏は国会議員ではなく、与党の国会議員団は反対派が多数を占める。6日の議員総会でも「反対」の方針を維持していた。大手紙「朝鮮日報」によると、6日の総会では反対派から「愚かな弾劾は野党に政権を明け渡すようなものだ」といった意見が出た。
国会運営は170議席を有する共に民主党が主導権を握る。同党は7日午後5時から弾劾案を採決すると表明した。ただ、7日は尹氏の妻、金建希(キムゴンヒ)氏を巡る数々の疑惑について捜査する特別検察官を任命するための法案の採決も予定されている。情勢次第では採決時間が大幅に変わる可能性もある。【ソウル日下部元美、福岡静哉】
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