米ニューヨークのコロンビア大で、ガザ攻撃への抗議活動のために野営する学生ら。パレスチナの旗も飾られている=4月24日(ロイター)

【ワシントン=大内清】イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に対する抗議活動が全米各地の大学に広がり、多数の逮捕者が出る事態となっている。学生らが「即時停戦」や米政府のイスラエル軍事支援の停止を要求する一方で、親イスラエル派はユダヤ系への憎悪をあおる「反ユダヤ主義」だと主張。パレスチナ問題を巡る政治対立が一層複雑になっている。

抗議拡大のきっかけは、東部ニューヨークのコロンビア大で18日、学生らが大学敷地内にテントを張って野営し、反イスラエルのデモを行ったところ、排除しようとした警察によって100人以上が逮捕されたことだった。

学生側はこれに反発し、連帯を呼びかける運動が拡大。同大とともに「アイビーリーグ」と呼ばれるハーバードやエールなどの名門私大のほか、西部カリフォルニア州や南部テキサス州などでも学生らが相次いで大学敷地内での泊まり込みを始めた。27日までに少なくとも約20校で同様の動きがあり、米紙ニューヨーク・タイムズによると、700人以上が逮捕された。

米ニューヨークのコロンビア大学で学生らが抗議活動のためにつくった野営地の周りにはイスラエルを支持する掲示物もある=24日(ロイター)

各地の抗議では、デモ参加者がユダヤ系学生に「欧州へ帰れ」との罵声を浴びせるケースも報じられ、「反ユダヤ主義」の高まりを懸念する声は強い。

イスラエルのネタニヤフ首相は24日、「反ユダヤ主義の暴徒が米国のトップ大学を支配した」と非難。親イスラエルの野党・共和党のジョンソン下院議長は同日、コロンビア大に出向いて抗議活動の停止を求め、州兵動員による強制排除を支持する姿勢をみせた。

これに対し、民主党会派所属でユダヤ系のサンダース上院議員が「イスラエルのガザ破壊を批判することは反ユダヤ主義ではない」と反論するなど、抗議活動を擁護する声もあり、事態の終息は見通せない。

抗議の広がりが11月の大統領選に影響する可能性もある。大学生ら若者層は1990年代後半以降に生まれた「Z世代」に当たり、推定有権者数は4000万人超。再選を目指す民主党のバイデン大統領はZ世代の支持を拡大するため、社会問題となっている学生ローン負担の軽減などを打ち出してきた。

しかし、学生らの間でこのままバイデン政権の対イスラエル政策への不満が高まれば、バイデン氏は重要な票田を失うことにもなりかねない。一方で抗議活動に過度な同情をみせれば、親イスラエル・ロビーなどから批判を浴びる。バイデン氏は22日、「反ユダヤ主義的な抗議を非難する」と同時に「パレスチナ人に起きていることを理解しない者も非難する」と述べ、バランスに苦慮している様子をにじませた。

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