26日のニューヨーク(NY)株式市場で、ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手3社の株価が軒並み下落した。トランプ次期米大統領が前日、不法移民や麻薬の流入を問題視し、各社が生産拠点を置くメキシコ、カナダからの輸入品に25%の関税を課すとSNS(ネット交流サービス)で表明したためだ。ただ、「交渉の脅し材料に使っただけ」との冷静な見方もあり、金融市場の動揺はひとまずは限定的だった。
メキシコから米国への自動車輸出が最も多いGMは、前日比8・99%安で取引を終了した。ステランティスは5・68%安、フォード・モーターは2・63%安だった。
メキシコから米国への自動車輸出は域内生産など一定要件を満たせば関税がかからない。人件費が安いなどの利点もあり、各社はメキシコで生産した自動車や自動車部品の米国への輸出を増やしていた。
実際に関税が引き上げられれば各社の経営に大きな打撃となる。前日の東京市場でトヨタ自動車や日産自動車などの株価が下落したのと同じ懸念で、米自動車大手3社にも売り注文が集中した。
ただ、26日のNY市場でダウ工業株30種平均の終値は前日比123・74ドル(0・28%)高の4万4860・31ドルだった。トランプ関税発動の投稿を受け値下がりして取引を始めたものの、後場にかけジワジワと買い注文が増えた。
背景には「本当に関税引き上げを発動するのか」との投資家の疑問がある。
トランプ氏の投稿を受け、メキシコのシェインバウム大統領は26日の記者会見で「両国のビジネスをリスクにさらす」と報復関税の可能性も含めてけん制しつつ、トランプ氏に対話と協力を促す書簡を送付。カナダのトルドー首相もトランプ氏と国境警備などに関して電話協議を実施した。
トランプ氏は関税発動の方針を示した25日のSNSへの投稿で、メキシコとカナダは「問題を容易に解決する力を持っている」と指摘。英調査会社キャピタル・エコノミクスで北米経済を担当するステファン・ブラウン副チーフエコノミストは「この発言が意味するのは、麻薬の供給削減や国境の安全確保に向けた信頼できる計画を提示することで、関税を回避できるということのようだ」との見解を示した。
とはいえ、トランプ氏の発言を全くの「こけおどし」と見るのは早計だ。トランプ氏は大統領選で、国内産業を守るため全ての国に対し10~20%、中国に対し60%の関税を課す考えも示しており、「関税引き上げ自体を目的化している」(米シンクタンク)との懸念が出ているためだ。26日には、各国との関税交渉などを担う米通商代表部(USTR)代表に、関税引き上げ強硬派のジェミソン・グリア氏を起用すると発表。その他の経済閣僚も高関税支持派がそろう。
また、前政権では、大統領就任から公約通り関税を引き上げるまで1年以上の時間がかかったが、2期目の今回は政権発足前の時点で引き上げのタイミングを示した。このため「動きが速い。前政権時代より迅速に関税を導入する可能性が高い」(エコノミスト)と警戒する声も招いている。【ワシントン大久保渉】
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