米ブルームバーグ通信は17日、トランプ次期政権が自動運転の規制緩和を検討していると報道した。大統領選でトランプ氏を支援した電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が求めていた措置。「規制緩和が事業運営に有利に働く」との観測が広がり、テスラの株価は急上昇している。
報道によると、トランプ次期政権は自動運転に関する連邦政府の規制作りを進める方針。現在は州ごとに認可を取得する必要があるが、国レベルで規制を統一し手続きの簡素化を進める可能性がある。米運輸省が取り組む課題の優先事項に位置づけるという。
マスク氏は10月下旬のテスラの決算発表会で、州ごとの規制について「信じられないほど手間がかかる」と批判していた。
マスク氏はトランプ氏が新設する「政府効率化省」のトップに起用される。具体的な内容は定まっていないが、マスク氏は政府組織のスリム化で大幅な予算削減が可能と主張しており、自動車業界を監督する運輸省にも影響力を及ぼす可能性がある。
報道を受け、市場では「テスラの自動運転車戦略に追い風になる」(大手証券アナリスト)との見方が拡大。週明け18日のニューヨーク市場で、テスラの株価は前週末に比べ一時8%超上昇した。大統領選後のテスラ株の上げ幅は30%を超えている。
テスラは年明け以降、本業のEV販売で苦戦を強いられており、マスク氏は投資家に対し自動運転車や人工知能(AI)の分野で収益を拡大すると説明していた。10月上旬には、ハンドルやアクセルペダルのない自動運転タクシーの試作車「サイバーキャブ」を初公開し、2026年の生産開始を目指す考えを示した。
ただし、テスラの自動運転技術はまだ不十分との見方が多い。
米安全当局は「完全自動運転システム」を搭載したテスラ車で、視界不良時に死亡事故を含む4件の衝突事故が起きたとの報告を受け、安全性に問題がないか調査を進めている。マスク氏はビジネスを阻害するとして多くの規制を問題視しているが、「安全技術が未熟なら、規制を論じる以前の問題だ」(自動車アナリスト)との見方も出ている。
マスク氏は大統領選で、巨額の献金をしてトランプ氏陣営を支援。自らが所有するX(ツイッター)に、民主党候補のハリス副大統領を批判する偽画像を投稿するなどソーシャルメディアを使ってトランプ氏勝利に貢献した。進行中の財務長官人事にXで口出しするなど、次期政権への影響力を強めている。【ワシントン大久保渉】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。