石破茂総理は日本時間の16日、訪問先の南米ペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と初めて会談した。日中両首脳は、「戦略的互恵関係」の包括的な推進を確認した。石破総理は、東京電力福島第1原発の処理水放出を受けた中国による日本産水産物の禁輸措置に言及し、早期輸入の再開を中国側に求めた。日中首脳会談の開催を受けて、外務省関係者は、「米国の対中経済政策はバイデン政権よりも更に厳しいものになると予想する。中国は対中投資の可能性がある欧州や日本、韓国、豪州、さらにはASEANに対しても対話路線のソフト外交を展開している」と分析する。また、石破総理は、中国・深セン市で9月に発生した日本人男児刺殺事件に言及し、在留邦人の安全対策を要請した。また、日本時間17日には米国のバイデン大統領と、中国の習近平国家主席が会談し、トランプ政権の発足を前に、米中が対話を続ける重要性を確認した。

社会への報復を狙った事件の相次ぐ発生が、中国国内を大きく揺るがしている。16日午後7時半ごろ、江蘇省無錫市の職業学校で刃物を持った21歳の男に襲われ、8人が死亡し、  17人がけがをした。さらに、11日には、中国南部・広東省珠海で、35人が死亡、43人が負傷する乗用車による暴走事件が発生した。公の場で起きた無差別襲撃事件は、国内外に大きな衝撃を与えた。地元警察の調べによると、運転の男(62)は、事件直後に所持していた刃物で自殺を図り、意識不明の重体となっている。珠海での事件を国民の多くが非難する中、習近平国家主席は、事件が与える影響を回避するために、リスク管理の強化と事件発生を防ぐための「重要指示」を出した。事件に関する警察当局の発表内容は変化した。当初、容疑者の犯行動機を、離婚後の財産分与を巡るトラブルの裁判の判決に対する不満とされていたが、警察は、「裁判所への不満」という部分を削除した。中国外務省は、「中国は世界で最も安全で、刑事犯罪の発生率が最も低い国の一つだ」と強調した。

中国政府は、長期化する不動産不況に加え、次期トランプ政権の対策、また、若年層の失業率上昇という大きな課題に直面している。中国国家統計局の調査によると、トランプ政権の1期目、2017年1月から21年1月の頃は、不動産投資が前年比10%に迫る勢いだったが、現在は、約マイナス10%と大幅に減少した。労働市場の低迷が際立つ。失業率は、2019年頃から上昇傾向が続き、現在は10%台後半で推移している。トランプ前大統領は、2期目の政権発足にあたり、中国製品に対して、最大60%関税を課すことを公言している。熾烈な対中強硬に対して、具体的な報復カードを中国は持たない。

★ゲスト:柯隆(東京財団主任研究員)、阿古智子(東京大学教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)

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