イラン国旗=テヘランで2021年6月17日、真野森作撮影

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは15日、イランが米政府に対して書面で、トランプ次期大統領を暗殺しないと約束したと報じた。書面が届いたのは大統領選(5日投開票)前の10月14日。イラン側はトランプ氏の返り咲きも視野に、緊張緩和を図った可能性がある。

 1期目のトランプ政権は2020年、イラン革命防衛隊で対外活動を担う「コッズ部隊」のソレイマニ司令官(当時)を無人機による攻撃で殺害。イラン側は報復を宣言しており、米側は警戒を強めている。8日には米司法省が、イラン革命防衛隊が、大統領選の投開票日前にトランプ氏を暗殺するようアフガニスタン人の工作員に指示していたと発表していた。

 報道によると、バイデン政権は9月、トランプ氏の命を狙う行動は「戦争行為」として扱うとイラン側に警告。今回の書面はこれに対する回答だという。ただ特定の当局者の署名はなかったという。

 トランプ氏は1期目の大統領在任中、イランが核開発を制限する代わりに欧米の経済制裁を解除する核合意(15年締結)から一方的に離脱。イランへの制裁を復活させるなど圧力を強めた。反発したイランはウラン濃縮を加速させた経緯がある。

 トランプ氏は来年1月の2期目の政権発足に向けて、安保・外交の陣容を矢継ぎ早に発表しており、対イランの強硬派が目立つ。ただトランプ氏は9月、「イランに核兵器は保有させない」などと述べ、イランとの「取引」に乗り出す可能性を示唆。今月11日には、トランプ氏の支援者で実業家のイーロン・マスク氏とイランのイラバニ国連大使が会談し、緊張緩和について議論したと報じられている。【ワシントン松井聡】

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