米連邦最高裁で開かれたトランプ前米大統領の「免責特権」を巡る口頭弁論のスケッチ=2024年4月25日、AP

 米大統領が政敵を暗殺したり、クーデターを起こしたりしても刑事免責を免れるのか――。米連邦最高裁で25日に開かれた大統領の免責特権を巡る口頭弁論で、「絶対的な免責」を主張するトランプ前大統領の弁護士に対し、判事らが問うた。あくまで仮定の質問だが、弁護士が「可能性はある」と主張したため、注目を集めている。

 口頭弁論では、多数派を占める保守派判事とリベラル派判事との間で免責に関する見解が大きく分かれた。保守派の判事らが公的な行為はある程度の免責保護を受けるべきだとの立場をにじませた一方、リベラル派の判事らは刑事訴追の恐れがなければ大統領が「やりたい放題になる」との警戒感を示した。

 リベラル派の判事らは、免責されるとすればその対象はどこまでなのかをトランプ氏の弁護士に重ねて尋ねた。ソトマイヨール判事は「大統領が政敵を汚職人だと判断し、軍や誰かに暗殺を命じた場合、それは免責を得られる公的な行為の範囲内なのか」、ケーガン判事は「大統領が軍にクーデターを起こすよう命令した場合はどうか」と聞いた。

 トランプ氏の弁護士はそれぞれの質問に「状況次第だが、公的な行為である可能性は十分にある」などと答えた。さらに、公的な行為であれば刑事訴追の前に連邦議会による弾劾と有罪判決が必要だと主張した。

 一方、保守派のトーマス判事が、ケネディ大統領がキューバのフィデル・カストロ政権を転覆させようとしたことなどに触れ、「(大統領が)起訴されることはなかった」と話し、免責を擁護する場面もあった。

 大統領の免責特権は、合衆国憲法には明確に書かれていない。最高裁は過去の裁判の中で、民事裁判上の免責については判断を示してきた。一方、現職大統領や大統領経験者で刑事訴追されたのはトランプ氏が初めて。刑事事件での大統領の免責について最高裁が判断を示せば初めてのケースになる。最高裁は今会期末の6月末から7月初旬までに判断を示すとみられる。【ワシントン西田進一郎】

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