【北京=三塚聖平】ブリンケン米国務長官の訪中で主要な焦点となったのは、ウクライナを侵略するロシアと中国の関係を巡るせめぎあいだ。露防衛産業を中国が支えているとみなす米側は、中国に支援をやめさせ中露間にくさびを打ち込むことを狙う。中国側は、米への対抗でロシアとの密接な関係を維持しながら自国の経済利益などを確保するため、ウクライナ侵略とは一定の距離を保っていると演出することに腐心している。
米側は、中国がロシアに対し、軍事転用可能な製品の輸出などを通じて侵略継続を可能にしていると批判している。ブリンケン氏の訪問で、中国に対露支援を再考させ、ウクライナの反転攻勢を支援したい構えだ。
中国外務省の北米担当責任者は22日に中国メディアを通じ、「中国はウクライナ危機を作り出した者でも、当事者でもない。常に客観的で公正な立場を堅持している」と主張した。その上で「中露の正常な国家関係を攻撃、中傷するのをやめるべきだ」と反発した。
中国は、米国との対立は今後も長期に及ぶと見込んでおり、対抗軸としてロシアとの関係を重視している。5月にはプーチン露大統領が通算5期目に入って初の外遊として中国を訪問し、協力関係を確認する見通しだ。
一方で、ウクライナ侵略に関して中国は、対露制裁に巻き込まれることへの警戒から距離を保とうとしてきた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米政府が中露の取引に関わる中国の一部銀行を国際金融システムから締め出す内容の制裁を検討していると伝え中国は米国の姿勢に敏感になっているとみられる。
欧州との関係安定化へも外交攻勢をかけており、習近平国家主席はフランス訪問を控えている。ウクライナ問題でロシア寄りの立場が際立てば欧州との関係に不協和音が生じる恐れもある。
北京の外交筋は「中国はロシアと一体と見られて不利益が多くならないよう振る舞おうとしている」と指摘する。
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