米環境保護局(EPA)は25日、国内の石炭火力発電所からの温室効果ガス排出に対する規制強化を発表した。2039年以降も運転を続ける予定の既存の石炭火力は、32年までに排出量を90%削減するか回収する必要があるとした。米メディアは新規制が実施された場合、国内に残る石炭火力の大部分が40年までに閉鎖されるとしている。
新規制は、35年までに電力部門の脱炭素化を掲げるバイデン政権の目標達成に向けた柱となる。32年までに閉鎖する石炭火力は新たな規制の対象外とした。
EPAは、実現には二酸化炭素(CO2)の回収・貯留技術(CCS)を推奨するが、現時点では大規模な商用化はされておらず費用も高い。米紙ニューヨーク・タイムズは、老朽化が進む既存炉へのCCS導入に懐疑的な見方を示し、新規制が実施されれば多くは40年までに閉鎖される可能性があるとした。既存の石炭火力200基以上のうち4分の1は今後5年以内に運転を停止することが見込まれているという。
一方、全米鉱業協会は「石炭火力の閉鎖を強いることを意図している」として規制の違法性を指摘する声明を発表。共和党が優勢な州も規制の阻止に向けて異議を申し立てる可能性がある。11月の大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領は化石燃料の増産を掲げ、再選された場合はバイデン政権が導入した環境規制を全面的に撤廃する方針を示している。
米国では23年の発電量に占める石炭火力の割合は約17%で10年間でほぼ半減した。再生可能エネルギーが約21%、天然ガスが約42%を占める。EPAは既存のガス火力発電所についても排出規制の強化を検討している。【ニューヨーク八田浩輔】
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