中国外務省の報道官は29日、韓国人をスパイ容疑で逮捕したと発表した。詳細は明かしていないが、韓国メディアによると、安徽省に住む50代の韓国人男性が2023年12月から拘束されて取り調べを受けているという。男性は中韓双方で半導体関連の企業に勤めた経験があり、韓国側に関連情報を伝えた疑いが持たれているとみられる。
中国では反スパイ法が14年11月1日に施行されて10年を迎えるが、韓国の聯合ニュースは「韓国人が同法で拘束される初のケース」と伝えた。
報道によると、この男性は23年12月、現地当局によって安徽省合肥市の自宅から連行された。ホテルに隔離されて取り調べを受ける「居住監視」を経て、今年5月に合肥市内の勾留施設に身柄が移された。容疑を否認しているという。
男性は過去にサムスン電子の半導体部門で勤務。その後、合肥市に拠点がある中国半導体大手でも働いた経験があり、当局はその際にスパイ行為をした疑いがあるとみているようだ。
習近平指導部は14年の反スパイ法施行後、外国の人材・組織への締め付けを強化。米中対立を背景に、カナダ人やオーストラリア人、日本人のように米国と関係が深く中国と摩擦が生じた国々の人々が摘発されるケースが目立ち「人質外交」との指摘もある。
同法施行後の10年間で少なくとも17人の日本人が拘束され、うちアステラス製薬の男性社員ら5人が現時点でも帰国できていない。「国家の安全」を名目とした不透明な法執行への懸念が外国企業の間で高まっており、「中国離れ」を加速させる要因ともなっている。【北京・河津啓介】
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