【カイロ=佐藤貴生】西アフリカのニジェールに駐留する米軍が撤収する見通しとなった。米国務省が24日、米軍撤退についてニジェール側と協議すると発表した。周辺地域の情勢不安定化に拍車がかかるとの懸念が出ている。ニジェールでは、マリやブルキナファソに続いて昨年7月、クーデターで軍部が実権を掌握した。3カ国はいずれもフランスの旧植民地で、ロシアの影響力浸透が目立っている。
米国務省のミラー報道官は24日に発表した声明で、「ニジェールと地域の安定に貢献」してきた米軍とニジェールの軍とのこれまでの協力関係について、「誇り」に思うと指摘した。
同国の首都ニアメーで25日、同国高官とフィッツギボン駐ニジェール米大使が協議。米国防総省高官も近く現地入りする。
ロイター通信によると、ニジェール軍部は今年3月に米軍との駐留協定を取り消す意向を示していた。旧宗主国フランスも軍を駐留させてきたが、クーデター後の昨年末に撤収した。
ニジェールは親欧米のバズム大統領がクーデターで排除されるまでは、米仏がアフリカのイスラム過激派の動向を監視する要衝だった。米軍は1000人超の要員を配置し、中部アガデス近郊の空軍基地で無人機(ドローン)による監視活動を行っている。
一方、ニジェールのメディアによると、露国防省が派遣した軍事顧問らが今月10日、現地に到着した。ニジェールの軍部と露政府は最近、関係強化を盛り込んだ協定を締結したとされ、ロシアがニジェールに対空ミサイルを供与するとの観測も出ている。
ロシアはかつて、民間軍事会社ワグネルを先兵にアフリカ諸国の取り込みを図り、偽情報を拡散して親露感情をあおってきたと指摘される。ワグネルのトップ、プリゴジン氏は搭乗していたジェット機が墜落して昨年8月に死亡し、露政府が地盤を引き継いだ可能性がある。ニジェールは原子力発電で使用されるウランの世界屈指の生産国として知られる。
ロイターによると、アフリカ西部や中部ではこの4年間に8回のクーデターが起きた。ニジェールなどサハラ砂漠南縁部のサヘル地域では過激派が暗躍し、22年には過激派関連の事件で推定8000人が死亡した。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」や国際テロ組織アルカーイダ系の組織が勢力を広げているもようだ。
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