台湾に近いフィリピン・ルソン島北部のカガヤン州で中国人留学生が急増し、物議を醸している。南シナ海で領有権を争うフィリピンと中国の間で緊張が高まる中、比軍は留学生の調査を開始。中国側が反発している。
比メディアによると、調査はカガヤン州の私立大などで学ぶ中国人留学生約4600人が対象。学生らは正規の学生ビザで入国しているという。比国家安全保障会議のマラヤ統括補佐は「安全保障上の脅威なのか、それとも、ただフィリピンで学びたい人なのかを見極める」と説明した。
同州とその周辺には、米国との「防衛協力強化協定」(EDCA)に基づき、2023年4月に米軍が使用できるようになった比軍の拠点3カ所がある。比下院議会では今年3月、米中関係や南シナ海の状況を踏まえ「(留学生の数は)ただならぬ急増ぶりだ」と懸念する声が出ていた。
これに対し「親中派」として知られるカガヤン州のマンバ知事は、中国人留学生が増加したのは、19年に比政府と中国側が結んだ高等教育に関する協定に基づくとし、「南シナ海の対立と中国人留学生を関連させる理由はない」と説明した。在フィリピン中国大使館は「悪意がある非難だ」と反発している。
比メディアは今回の問題について「中国との新たな火種」と報じる一方で「疑心暗鬼が中国人全体に対する差別につながる懸念がある」と指摘している。【バンコク石山絵歩】
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