インドの情報機関に所属していた当局者が2023年にインド政府に批判的な米国在住のシーク教徒指導者の暗殺を計画し、10万ドル(約1500万円)の報酬を約束して「殺し屋」を雇っていたことが、米司法当局の捜査で判明した。
しかし、殺し屋の正体は米捜査当局の潜入捜査員で、暗殺計画は頓挫。印当局者は委託殺人の共謀などの罪で、米連邦地裁に起訴された。
司法省によると、起訴されたのは、インドの対外情報機関の職員だったビカシュ・ヤダブ被告(39)。麻薬取引や武器密輸に関わるインド人男性と共謀し、23年5月ごろに在米のシーク教徒指導者の暗殺を計画し、殺し屋を雇った。23年6月には「前金」として1万5000ドル(約225万円)を現金で支払った。
カナダとは外交問題に発展
ヤダブ被告らは当初、23年6月下旬にモディ首相が国賓として訪米する前後には暗殺を実行しないようにくぎを刺していた。しかし、モディ氏の訪米直前、カナダで別のシーク教徒指導者が殺害される事件が発生。「もう待つ必要はない」と方針を変え、暗殺実行を促していた。殺害を実行した場合、「さらに大きな仕事を依頼する。毎月2~3件の仕事がある」と別の暗殺の依頼もちらつかせていた。
共謀したとされるインド人男性は23年6月末、米国の要請を受けたチェコ当局が拘束。ロイター通信によると、ヤダブ被告も12月、インド国内で別の殺人未遂事件に関与した疑いで逮捕された。米当局はインド側にヤダブ被告の引き渡しを求めるとみられる。
標的になったシーク教徒指導者は、インド北部パンジャブ州の分離独立を目指す「カリスタン(清浄の地)」に関わっていた。カナダで殺害された被害者もカリスタン運動のメンバーで、事件はインドとカナダの外交問題に発展。報道によると、両国は今月、相手国の外交官の一部を国外追放すると決めるなど、影響が尾を引いている。【ワシントン秋山信一】
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