ニューヨークの中心にあるマンハッタン地区。10月11日夜、舞台芸術の拠点として1943年に設立された由緒ある劇場「ニューヨーク・シティー・センター」は、多くの人でごった返していた。
皆の目当ては人気漫画作品「進撃の巨人」のミュージカルだ。諫山創さんが描いた作品の単行本の累計発行部数は、全世界で1億4000万部を突破した。人間を捕食する謎めいた巨人が支配する世界を描いた物語で、ミュージカルは2023年1月に大阪と東京で初めて公演。ニューヨークが海外公演の初めての地となった。
用意された約2250席は完売。劇場内には巨人と戦う「調査兵団」のコスチュームに身を包んだ観客も大勢いた。1時間50分にわたる公演では、主要な登場人物が出ると歓声が響き、舞台上に巨人が出現した時には驚嘆の声が上がった。
「まるで生きているかのような巨人の動き、圧倒的なダンスやアクション、全てが素晴らしかった」。友人と駆けつけた看護師のレスター・カストルさん(35)は公演後、興奮した様子で感想を語った。企画に参画した会社の担当者によると、11~13日に催される全4公演は全て売り切れたという。
私が特派員となって約3年。前任地のブラジル・サンパウロも含めて、赴任先では日本アニメが常に身近な存在に感じられた。「ファベーラ」と呼ばれるブラジルのスラム街には大抵、人気作「ドラゴンボール」のキャラクターなどがプリントされたTシャツ姿の子どもの姿が見られた。取材相手と日本アニメの話で盛り上がったことも多い。
「米国アニメは内容が分かりやすい子ども向けの作品が多い。一方、日本アニメは構成が緻密で話に奥行きがある。大人も十分楽しめる」。進撃の巨人のミュージカルを観劇したコリン・ホールさん(24)は日米のアニメの違いをこう語る。
ミュージカルでは公演後、観客がスタンディングオベーションで役者らをたたえ、万雷の拍手が鳴り響いた。日本では漫画やアニメなどの「二次元」の世界を「三次元」の舞台で表現したものを「2・5次元ミュージカル」と呼ぶ。私も巨人の圧倒的な存在感に目を丸くした一人だ。世界に誇る日本の漫画とアニメ。人気の高さを改めて感じた夜になった。
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