今年、建国75年を迎えた中国。もっとも変わったのは、女性の生き方かもしれません。
「結婚はしたくないけど子どもは欲しい」。
自ら進んでシングルマザーの道を選んだ女性たちを取材しました。
結婚しないのは「男性に対する失望感」
北京市内で暮らすナナさん(仮名)。デザイナーをしながら7歳の長女を育てています。父親にあたる男性とは、あえて結婚しませんでした。
ナナさん(仮名・30代)
「結婚しないのはまだ人生を一緒に過ごしたいと思う相手が見つかっていないからかもしれません。経済的に自立した女性が増え、男性に対する失望感もあり、結婚せずに子どもを育てる女性はこれから増えていくでしょう」
「男性に対する失望感」。いったいどんなことなんでしょう?
ナナさん(仮名・30代)
「育児に関わらない父親は私の周りにもたくさんいます。もし、家事を手伝ったり、子どもの面倒を見てくれないのであれば、(夫の存在は)もう一人手のかかる子どもがいるようなもので、それならば結婚しても意味がないと思うのです。私は自分の子どもをひとりで育てる経済的余裕がある。ひとりでできるならなぜ夫が必要なのか、と思うのです」
日本と同じく、家父長制の伝統がある中国。
長らく女性は早く結婚し、後継ぎの男の子を産むことや夫の両親の面倒を見ることなどが求められていました。しかし今、その家族観に変化が起きています。
中国メディアによりますと今年の婚姻数は1980年以降、最低となる見通しです。
なぜ中国の若者は結婚しないのか?子育てにかかる費用が高いことに加え女性の高学歴化とともに、経済的に自立し、自由な生き方を選ぶ女性が増えていることが背景にあるとみられます。
ナナさん(仮名・30代)
「以前は女性は子どもを育て、義理の両親に孝行しなくてはならないと考えられていました。25歳を過ぎて独身だと、親や近所の人から『あの子は結婚できないのかしら』という視線を浴び、プレッシャーをうけたでしょう。しかし今の若者は個人主義的で、自由を追求したいのです」
代理出産で双子の母に…37歳女性の選択
ユエさんは結婚せず、代理出産で子どもを持つ、という道を選びました。
ユエさん(仮名・37)
「37歳の今になるまで、子どもが欲しいかどうかわからなかったんです。でも歳をとると(子育てが)難しくなるかもしれない。それと、妊娠している間、自分のできることが制限されてしまうかもしれない。そのストレスを考えたら代理出産の方が楽だと思ったのです。あと、子どもを持つこととパートナーを持つことは別だと考えているのもありますね」
6か月の双子の母親になったユエさん。代理出産にかかった費用はおよそ2000万円。しかし、キャリアを犠牲にすることもなく、支払った金額に見合う幸せを得たといいます。
ユエさん(仮名・37)
「昔は女性は経済的に自立していませんでしたから、男性に依存せざるを得ませんでした。しかし今は男性より稼ぐ女性もいますので男性に依存する必要もないし、結婚しないという選択肢も選べるようになったのです」
ある調査では、結婚の予定はないと答えた女性は44%に上るといいます(中国共青団調査・2021年)。
ユエさんの祖父母はお見合い結婚。両親は恋愛結婚。しかし今は女性が多様な生き方を選べる、新たな時代になったと考えています。
ユエさん(仮名・37)
「私たちの世代は結婚するのかしないのか、どんな人生を送りたいのかを自分で選ぶのであって「どうすべきか」ではない。これが一番大きな変化だと思います。私たちの時代は、より自己実現が追求できるようになったと思います」
今回取材に応じてくれた2人の女性。いずれも匿名での取材になりました。まだまだ自由な生き方を公言するのがはばかられるのもまた現実です。
女性たちの変化は、今後中国をどのように変えていくのでしょうか。
JNN北京支局 立山芽以子
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