米大統領選の出張は取材の合間に史跡を訪ね、見聞を広げるのが密(ひそ)かな楽しみだ。東部ニューハンプシャー州の予備選では、日露戦争の講和会議の舞台となった港町ポーツマス、国際通貨基金(IMF)設立が決まった山間地ブレトンウッズに立ち寄り、日本や世界の発展に尽くした先人の努力に触れることができた。

時間の都合がつかず、訪問を断念した施設もある。中西部アイオワ州では、帰路を急ぐ車中から「フーバー大統領図書館・博物館」の案内標識を見かけ、事前に調べておけば見学できたのに…と後悔した。

そんな折、帝京大専任講師の山口航さんが新刊『アメリカ大統領図書館』(大阪大学出版会)を送ってくださった。田中慎吾・大阪経済法科大特別専任准教授と高橋慶吉・大阪大大学院教授との共著。私文書の扱いだった大統領文書が1978年成立の「大統領記録法」を経て公文書として保管される歴史などが紹介されている。

31代フーバーから43代ブッシュまで全米に点在する13の大統領図書館の活用ガイドでもあり、目を通すだけで楽しい。44代オバマ大統領の図書館はデジタルアーカイブとして運用が始まり、博物館は中西部イリノイ州シカゴのサウスサイドで建設中だ。オバマ氏が政治の道に進むきっかけとなった地で、いつか訪ねてみたい。(平田雄介)

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