ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、米上院の緊急支援予算案可決を受け、米国に謝意を表明した。ウクライナは支援再開によりロシア軍との戦いで続く苦境の打開につなげたい考え。ただ、兵器の到着前に露軍が大規模攻勢に出る可能性があり、ウクライナ軍は兵員の損耗も深刻化。戦局を好転させるまでには至らないとの見方も強い。
ゼレンスキー氏は米上院の予算案可決後、「ウクライナへの重要な支援の承認に感謝する」と表明。「(上院の)投票は民主主義と自由世界のリーダーとしての米国の役割を強めた」と評した。
米国の軍事支援が中断されたウクライナ軍は過去数カ月間、最激戦地の東部ドネツク州で劣勢を強いられ、露軍に徐々に占領地域を広げられた。防空ミサイルの枯渇で露軍の空爆にもさらされた。米欧州軍のカボリ司令官は発射する砲弾の差が拡大し、近いうちに露軍の10発に対しウクライナ軍は1発になる可能性があると指摘していた。
米メディアによると、米国はまず防空ミサイルや155ミリ砲弾に加え、歩兵戦闘車などを追加供与する方針で、ウクライナ軍の前線での攻撃力や防空力、機動力が増強されるのは確実だ。
ただ、兵器が前線部隊に届くまでには数週間かかると見込まれる。米シンクタンク「戦争研究所」はそれまでに露軍が「地上作戦やミサイル攻撃を強化する可能性が高い」と分析。その場合、ウクライナ軍はさらに後退を強いられる可能性があるとした。
また、米ブルームバーグ通信などは軍事専門家の見解を踏まえ、「両軍の物量差は大きい。米国の支援再開でウクライナ軍は戦線を安定させることができるが、優位に立つまでには至らない」などと伝えている。
さらに独紙ビルトの軍事専門家はウクライナ軍の前線の人員が手薄だと指摘。欧米の支援を有効に活用するには「少なくとも新たに兵士25万人の動員」が必要だとの見方を示している。ウクライナ兵の動員強化を求める声は米国でも出ている。
ウクライナも今月、軍への招集年齢の27歳から25歳への引き下げや、招集拒否者への罰則強化などを定めた一連の法改正を実施。大規模な追加動員を急いでいる。
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