米国のホワイトハウス=首都ワシントンで2023年4月18日、西田進一郎撮影

 米政府は27日、過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討を目的にイラクに駐留する米軍主導の有志連合軍について、2026年9月までに2段階に分けて大幅に削減すると発表した。両政府が合意した。ロイター通信によると、イラクには2500人が駐留しているが、撤収する規模は明らかになっていない。

 中東では、イランが支援するパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが、米国が支援するイスラエルと戦闘を続けている。イラクには親イランの武装組織の拠点があり、削減により米軍の地域での影響力低下が懸念される。

 撤収はイラク側が求めており、米政府と協議を続けてきた。米政府高官は「ISは弱体化したが消滅はしていない」と説明。その上で、今回の合意が「有志連合軍による任務」から、米国とイラクの「2国間による安全保障関係」への移行だと強調した。

 米政府高官によると、第1段階は9月から25年9月までで、イラク国内の特定の地域での駐留を終了する。26年9月までの第2段階では更なる撤収を検討する。

 米軍は03年のイラク戦争でフセイン政権を倒し、駐留を開始した。

 11年に一度撤収したが、ISの活動が活発化したことを受け、14年に有志連合軍を結成して再びイラクに駐留。ISは一時、イラク第2の都市・北部モスルを支配下に収めるなど隣国シリアも含めて勢力を拡大したが、有志連合軍の掃討作戦などで19年に支配地域を失った。有志連合軍はシリアにも約900人が駐留している。

 ISは弱体化したものの、イラクとシリアに約2500人の戦闘員がいるとされる。またアフガニスタンでもISの分派である「ISホラサン州」(IS―K)が活動している。

 イラクが米側に撤収を求める背景には、米国と対立するイランの存在がある。イラクのスダニ首相は親イラン政党の出身で、米国とイランとの間で有志連合軍への対応を巡って苦慮してきた経緯がある。【ワシントン松井聡】

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