米国旗=米首都ワシントンで2023年11月14日午後、西田進一郎撮影

 米国では、27日の自民党総裁選で勝利して次期首相となる石破茂氏が、日米韓などでつくる「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」を提唱したことが注目されている。

 米政府は、安保体制参加国が国家の安全を相互に保障する「集団安全保障」の議論は、アジア太平洋地域では「時期尚早だ」(クリテンブリンク国務次官補)との立場をとる。石破氏が主張する日米地位協定の見直しも、米側では必要性が十分認知されているとは言いがたく、まずは議論の土台作りが求められそうだ。

 「“対等ではない”日米同盟の見直しを望む日本の新首相は、米政府との緊張の可能性を予感させる」。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、総裁選に関する速報記事の冒頭で、石破氏をこう評した。ワシントン・ポストは「中国や北朝鮮の脅威に対抗するためにアジア版NATO(の創設)を望んでいる」と紹介した。

 米国のエマニュエル駐日大使はX(ツイッター)への投稿で石破氏に祝意を表し「新首相と共に日米同盟を強化し、さらに緊密な日米関係を築いていくのを楽しみにしている」と述べた。

 防衛相経験者の石破氏は安保政策に精通する。米国内に自衛隊の常設訓練基地を作る案や、在沖縄の米軍基地を自衛隊が共同管理する案を提唱するなど、米国にも新たな「難題」を突きつけている。だが、米国は中国との戦略的競争を最も重視し、こうした議論の優先度は高くない。

 米国は11月の大統領選を経て、来年1月には新政権に移行する。民主党のハリス副大統領が同盟国重視の現路線を継承するか、同盟国にも負担増を求める共和党のトランプ前大統領が復権するかによって、状況は大きく異なる。

 当面、米政府は日本の新首相と関係構築を図りつつ、石破氏の持論にどう向き合うかは米国での新政権発足後に検討するとみられる。【ワシントン秋山信一】

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